囚われのシンデレラーafter storyー
”……まず、データが圧倒的に足りない。
この資料は何のためのものだ? 営業が競合他社に勝つためにプレゼンするときのための裏付け資料だ。相手にしているのは素人じゃない。
イメージだけでは説明するときの説得力に欠ける。この強みを、数字のデータで表せ”
”すみません”
慌てて頭を下げる。
そこにデータがないわけではないはずだ。
その厳しさを目の当たりにする。
”とにかく、経営企画にいる以上、客観的数値を大切にしろ”
”はい”
西園寺さんが素早くチェックを入れた資料を返された。
”ランベール。あなたが以前作成した宿泊者のリピート率と、コンベンションエリアの利用満足度のデータがあったな。あれを、彼女に”
”はい”
”野田君。君も、ここにある資料、データ、すべて頭に入れるくらいのつもりでチェックして。そうでないと、いい資料は作れない”
”はい”
”――それから。確かに、ランベールの言う通り、資料のレイアウトに関してはいい。洗練されていて高級感があるから、それは活かしたままで。営業部との打ち合わせの時に、プレゼン資料の参考にしてもらおう”
西園寺さんに、褒められた――。
”分かった”
”はい”
ランベールと共に返事をする。
”よろしく頼むよ”
二人でマネージャー室を出て、顔を見合わせた。
”……ああいうところがヨシタカだ”
欠点ばかりじゃなくて、いいところも認めてくれる。
想いは募りゆくばかりだ。
――そして。
”――皆に報告だ。うちに、決まったそうだ”
最終プレゼンにも同行していた西園寺さんの元に一本の電話が届く。その受話器を置くと、そう皆に言った。
”凄いですよ!”
”良かった!”
一斉にオフィスから歓声が上がる。
”これまで、政府主催のような大きな国際会議は、すべてフランス系の伝統あるホテルが独占していた。どうしても食い込めなかった分野だ。本当に凄いことだよ。これからの経営戦略で大きな強みになる!”
ランベールが興奮気味に捲し立てる。
そこに、社長が直々に現れた。
それに皆が驚く。
”よくやってくれた。今回はクラウンパリを挙げてのプロジェクトだった。各部署と連携してそれを的確に取りまとめた君の手腕は大きい。財務部と営業部、そして我々経営陣との調整には苦労したと聞いている。感謝しているよ”
西園寺さんと社長の会話に、皆が視線を寄せる。
”いえ。私はただ皆のアイディアと努力を代表して執行していただけだ。ぜひ、ここにいる皆を讃えて欲しい”
そう言うと、西園寺さんは表情に少し笑みを浮かべて、冗談交じりに言った。
”せっかくの機会です。ここにいる人の顔をよく見て行ってください”
社長がその言葉を受けて、経営企画部の面々を見回す。
”よく覚えておくことにしよう”
スタッフの皆が歓喜したのは言うまでもない。