囚われのシンデレラーafter storyー

 社長がオフィスを出て行った後、皆が西園寺さんの周りに集まった。

”本当に、西園寺さんは凄い人です。
実は私、ずっと前から西園寺さんを尊敬していました。日本で、あなたの噂は聞いていた。
あんな不祥事さえなければ、間違いなくセンチュリーのトップになっていた人です! いえ、あの不祥事で、むしろあなたの人となりを本当の意味で知った”

あまりの西園寺さんの功績に興奮して、つい口が滑ってしまった。

”……不祥事って、何ですか?”

若いスタッフが疑問の目を投げかける。
そして、少し気まずい空気が漂う。

そうだ。ここにいるある程度上の人たちは事情を知っているだろうけれど、若い子たちは何も知るはずがない――。

”い、いえ。とにかく、マネージャーは凄い人だと言いたくて――”

焦る私の言葉を遮るように西園寺さんが言った。

”私も、過去に経営の責任ある立場として大きなミスを犯したことがあった。そんな自分をこのクラウンに拾ってもらったからね。少しでも役に立ててよかった”

表情を変えることもなく話す西園寺さんを見つめる。

”あんなの、ヨシタカの過ちではないさ。あなたは立派な責任者だった”

ランベールがそう言うと、西園寺さんが笑顔になって自分の部下全員を見回した。

”今回は、本当によく頑張ってくれた。思う存分、このあとの休暇を楽しんでくれ。その後にはまた、本格的に国際会議に関する仕事が待っている。十分、英気を養って来るように”

再び、歓声が上がった。


 それぞれが席に戻った後、ランベールと西園寺さんが何やら会話をしていた。

”――ヨシタカ、パリ市と政府との打ち合わせ、少し前倒ししそうだと聞いたが。大丈夫か?”
”ああ。皆のバカンスを取り上げるほどではない。私が出席すれば問題ないと確認済みだ”
”でも、それではあなたが休暇を取れない――”

え――?

つい、聞き耳を立ててしまう。

”そんなことはないよ。少し遅れるだけだ。
それに、ここはパリだぞ? 向こうだって、そんなにこの時期に働きたくはないだろう”
”でも――”
”ランベール。ありがとう。本当によくやってくれた。あなたもきちんと休みは取ってくれ。そうでないと私が怒られる”

西園寺さんは、笑っていた。


 その夜だった。

 リフレッシュルームで、西園寺さんが再び電話で話しているのを聞いてしまった。

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