囚われのシンデレラーafter storyー
「――ごめんな。やっぱり、アズサが日本にいる間に帰国するのは難しくなってしまった。本当にごめん」
完全に暗くなった空がリフレッシュルームの窓ガラスを鏡にして。
その、窓に額をつける後姿が、いつでも凛とした西園寺さんと全然違う――。
「ああ、うん。そうか……そうだな。ありがとう」
昼のランベールとの会話を思い出す。
私たち部下の代わりに休暇を遅らせると言っていた。
それで、彼女と会えなくなった――?
「……え? それは、凄いな。おめでとう。俺も、楽しみだ」
その会話の内容はまるで分からないけれど、この場を立ち去れない。
「……それはやっぱり、男――だよな」
マネージャーじゃない、一人の男としての切ない声に、胸が締め付けられる。
「……分かってる、分かってる。でも、俺はアズサに会えないのに、なんだか悔しいだけだ……なんてな。しっかり頑張れよ。ああ、うん――じゃあ」
その会話は終わったみたいなのに。そのスマホを手にして腕をぶらりと下ろしたまま、西園寺さんは動かなかった。
どんな話をしてどんな風に切ったのか分からないけれど、ただ、その背中が物語る。
壁に肩をもたれさせ、額を窓につけたまま。
「……ホント、情けないな」
誰もいないリフレッシュルームに、溜息交じりの声が漏れて。
その声に、激しく心臓が動くのにこの足はまったく動かなかった。
おもむろにその身体がこちらに向いて、視線が合った。