囚われのシンデレラーafter storyー


「――ごめんな。やっぱり、アズサが日本にいる間に帰国するのは難しくなってしまった。本当にごめん」

完全に暗くなった空がリフレッシュルームの窓ガラスを鏡にして。

その、窓に額をつける後姿が、いつでも凛とした西園寺さんと全然違う――。

「ああ、うん。そうか……そうだな。ありがとう」

昼のランベールとの会話を思い出す。
私たち部下の代わりに休暇を遅らせると言っていた。

それで、彼女と会えなくなった――?

「……え? それは、凄いな。おめでとう。俺も、楽しみだ」

その会話の内容はまるで分からないけれど、この場を立ち去れない。

「……それはやっぱり、男――だよな」

マネージャーじゃない、一人の男としての切ない声に、胸が締め付けられる。

「……分かってる、分かってる。でも、俺はアズサに会えないのに、なんだか悔しいだけだ……なんてな。しっかり頑張れよ。ああ、うん――じゃあ」

その会話は終わったみたいなのに。そのスマホを手にして腕をぶらりと下ろしたまま、西園寺さんは動かなかった。

どんな話をしてどんな風に切ったのか分からないけれど、ただ、その背中が物語る。

壁に肩をもたれさせ、額を窓につけたまま。

「……ホント、情けないな」

誰もいないリフレッシュルームに、溜息交じりの声が漏れて。
その声に、激しく心臓が動くのにこの足はまったく動かなかった。

 おもむろにその身体がこちらに向いて、視線が合った。

< 106 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop