囚われのシンデレラーafter storyー
オフィスへと戻って行く背中を追う。
経営企画部のオフィスは、ほとんどの照明は消えて、マネージャー室のスタンドと私の席の頭上だけ。ブラインドの上がった窓の向こうは、既に完全に陽は落ちていた。
皆が帰った後のオフィスは静かだ。
毎日、毎日、私の帰宅時間は西園寺さんに合わせて来た。彼が早く帰る日は残業などせず、そして、こうやって彼が仕事をしている日は絶対に仕事をした。そうやって、懸命に西園寺さんの懐に入り込める機会を狙って来た。
二人きりになれる数少ない機会をうかがい続けて。
そうよ。だから何だって言うのよ。それの何が悪いの――?
乱暴に手の甲で涙を拭く。そして、マネージャー室で帰り支度をしている西園寺さんの元に乗り込んだ。勢いよくその扉を開ける。
「――ノックもせずになんだ」
そんな声など無視して、椅子に腰かけている西園寺さんの元にわき目もふらずに向かう。
すべてお見通しなら、もう、何も隠す必要なんてない。
どうせ私に見向きもしないというのなら、どんな手段に出たって同じだ。
自分でもどうかしていると思う。
どれだけ待ったところでその心を手に入れることができないというのなら、せめて。
この夜しかこんなことは出来ないということを、もう頭の片隅で理解している。
心かき乱される今、衝動で動いてしまえる今だから。
西園寺さんの心をアズサさんが独占しているというのなら、せめて。そのアズサさんが独占している身体は、今夜だけでも私のものにさせてよ。
顔のないアズサさんが、私の頭の中で、西園寺さんに優しく抱かれているのを想像する。
アズサさん。あなたを甘く甘く愛するこの人が、他の女に触れるのはどんな気分――?
素早く西園寺さんの膝の上に跨るようにして椅子に膝立ちし、顔を見下ろす。
その身体に触れたことなんて一度もなかった。
触れたくて触れられたくてたまらないのに、そんなことできやしなかった。
「……なんの真似だ?」
私を見上げるその目は、凍てつくような冷たさだった。
でも。もう、どうなったっていい。
どうせ軽蔑されているんだから。
「そうよ。あなたの言う通り。私は、あなたが好き。惚れているんです。惚れた男を手に入れたいと思うのが、そんなに悪いことですか?」
「そこを、どけ」
「嫌です」
脚を開いているから、タイトスカートの裾がめくれ上がる。
西園寺さんの両肩に手を付いた。
薄ピンク色のシャツの胸元から、私の胸の谷間がのぞくようにこの身体を西園寺さんに近付ける。
これまで、君が欲しいと男に乞われ跪かれて来た。
自らこんなことをする自分を、私は知らない。