囚われのシンデレラーafter storyー
「どけと言ったのが、聞こえないのか?」
その鋭い声さえも、もう、二人だけのものに思える。
「言葉では強がっていても、あなたも男、身体は別なはずです。さっき、西園寺さんの寂しそうな声を聞きました。彼女さんと会えないんですよね? もう一か月以上、彼女を抱いてない。寂しいはずです」
西園寺さんは、ただ私を見つめるだけで力ずくで振り払おうとはしなかった。
だから、肩に置いたこの手をゆっくりと滑らせる。
西園寺さんに触れているんだ。焦がれてたまらなかった人に、今、触れている――。
こんなに間近に西園寺さんを感じたことはない。高揚感とおかしな興奮でいっぱいになる。
「私はあなたが好きなんです。だから、あなたは私を好きなようにしていい」
私を手に入れようとした男も、そうでない男も。どちらも、一度は私を撫でるように見る。
男たちが言っていたのだから、間違いはない。
――有紗の身体に欲情しない男なんて、いないさ。
「もちろん、私も西園寺さんもいい大人同士。あなたに大切な恋人がいることは分かってます。それを邪魔しようだなんて思わない。あなたと彼女が離れている間だけのことだとちゃんと割り切ります。誰にも言ったりしない」
一度だけでいい。
一度だけでもこの人に抱かれることが出来たら、もうそれだけで――。
「……そうやって、これまでも男を誘って来たんだな?」
「いえ。こんな風に自分から誘うのは初めてです。西園寺さんだからですよ? 今、オフィスには誰もいません。だから――」
「その手をどけろ。今すぐ」
「あなたの恋人の、アズサさんの代わりでもいい。ちょうど名前も似ている――」
「――俺が本気で怒る前に、」
手のひらがスラックスへと辿り着こうとしたとき、激しく怒気の孕んだこえが飛んで来た。
「その身体と手を離せ。今すぐ!」
「西園寺さん――」
「自分から離れるんだ。おまえなんかに、指一本触れたくはない」
私を振り払わなかったのは、受け入れようとしたからじゃない――。