囚われのシンデレラーafter storyー

「――アクが強くて自信家で俺様で。そして、たまらなくセクシーなオトコなのよ。そんな男が、舞台の上で、ソリストの演奏を最高レベルに引き上げて、最高に気持ちよく演奏させてくれるの」

その目が怪しく光る。

「……それで落ちない人がいると思う?」
「はぁ」
「私は演奏家ではないから分からないけど、舞台の上で感じるエクスタシーは他には変えられないんだろうね」

エ、エクスタシー……?

「公演終わる頃には、女も男もイチコロよ。そこは俺様。自分から求めたりしない。ソリストたちがあの男の元に跪くのよ。綺麗な女はウエルカムらしいけど、それはそれだけのこと。そして、気付けば沼の上に(しかばね)が浮いているってわけ」
「へ、へぇ……そうなんですか」
「だからあなたも気をつけてよ。あなたはまだ、これからなんだから。こんなところで屍になっている場合じゃないのよ」

植原さんの言葉に、私は思わず笑ってしまった。

「何笑ってるの? 笑ってる場合じゃないからこうして忠告してるのよ」
「い、いえ。ご忠告ありがとうございます。でも、私は大丈夫です」

尊敬することはあっても、
佳孝さん以外に心惹かれたりするわけない。

「大丈夫とか言っている人が一番危ないのよ。でも、まあ――」

植原さんが、ソファの背もたれに背を預けて私を見た。

「松澤さんの才能は間違いない。絶対に、一緒にやって損はないから。
だからこそ、世界のオケから呼ばれる。ソリストも惚れる。屍も、必ずその後にはもっといい演奏家になっている」

綺麗な巻き髪がくるんと揺れて、植原さんがにっこりと笑う。

「まあ、あなたも頑張って。さあ、行きましょうか。松澤さんのところに」

よいしょと、植原さんが立ち上がった。

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