囚われのシンデレラーafter storyー
松澤さんのその言葉に、逆に、必要以上の緊張は消え冷静になって行くのに気付く。
きっと、ものすごくフェアな人なんだろう。
余計な権威やバックグラウンドではなく、その瞬間自分が聴いたものをそのまま評価してくれる人なのだ。
だったら、私は、私が積み上げて来たものを出せばいい。
コンクールで3位を取ってから、気付かぬうちにそれがずっとプレッシャーになっていたのかもしれない。
でも、コンクールは既に過去の物だ。
「……確かに、松澤さんのおっしゃることもごもっともですが、あのソコロフも彼女の才能を早々に認めたと聞いていますから。実力に間違いないと、私たちも自信を持っております。何より、チャイコフスキーの本選での聴衆の反応がその答えだと思っていますよ。私も、その一人です」
植原さんが松澤さんに笑顔を向けた。
「私とやるんだ。本物でないと困るよ。新人だろうとベテランだろうと、そんなもの関係ない。私の指揮で演奏して、客から金をとる。中途半端なものは絶対に許さない」
「私もバイオリニストですから。腕一本で、納得させられる演奏をするべきだと思っています」
勲章は、すぐにその効力を失う。結局は、この腕だけで勝負しなければならない。
「それが出来なければ次はない。私もその覚悟で舞台に立ちますので、よろしくお願いします」
深く、頭を下げる。
何をどうあがいたところで、私はこの人の胸を借りて演奏する立場にある。
だからこそ、認めさせなければならない。
一人のバイオリニストとして――。
その後は、今後のスケジュールなどについて、植原さん主体に打ち合わせが行われた。