囚われのシンデレラーafter storyー
「そうなんです。松澤さんに会って来ました。本当に植原さんが言っていたイメージ通りの人でした」
松澤さんに会った時のことを佳孝さんに説明した。
「会うなり『私はコンクールの結果なんかで実力を判断したりしない! コンクールの結果なんてクソだ!』って言われて。『この耳で聴いたものしか信じない』って。これから聴かせなくちゃいけないというのに、もう怖いのなんのって」
冗談ぽく言って笑うと、佳孝さんが一人呟くように言った。
「そうか。そんなことを……」
私の頭に置かれていたその手はいつの間にか離れ、窓の向こうを眺めている。
「だったら大丈夫だな。あずさの音が本物だってことは聴けばすぐに分る。きっと彼も、あずさの魅力に気付かされる……」
「松澤さんがどう判断するか不安もありますけど、でも、自分の音には自信があるんですよ。だって、佳孝さんを号泣させることができたんだから」
佳孝さんに笑顔を向ける。でも、そこにあったのは、どこか遠くを見つめるような横顔だった。
「佳孝さん――」
「そうだよ。何も不安に思うことなんてない。自信を持って聴かせてやればいいさ。絶対に、大丈夫だ」
でも、すぐにいつもの優しい笑みを私に向けてくれた。
「はい。松澤さんに、私の持っているものすべてをぶつけられたらって思っています。
パリ公演、佳孝さんが観に来てくれるって言うから、何が何でもいい演奏をしますから。進化した私を見せられるように、頑張りますね」
「ああ。楽しみにしてる」
お客さんはもちろん、佳孝さんもがっかりさせないように。
私は佳孝さんが喜ぶ顔が見たい――。
パリから東京まで会いに来てくれた佳孝さんの、その姿を心に焼き付ける。