囚われのシンデレラーafter storyー
それからカフェを出て、佳孝さんが宿泊しているというホテルにやって来た。
「佳孝さんも、明日パリに戻るんですか?」
「ああ」
クーラーの効いたひんやりとした部屋は、熱のこもった身体をクールダウンさせる。
思いもかけず会えた喜びも、離れる時間を思う寂しさに感情を変えて行く。
「俺は突然来たからな。あずさのお母さんは明日まであずさと過ごせると思っているだろう。お母さんをがっかりさせたくないし、一緒に過ごせる時は出来る限り傍にいてあげた方がいい。お母さんが起きている時間までにはあずさを家まで送って行くから、残りの時間を俺にくれ」
心の中では、『来月もどうせ東京に来るから』って言ってしまいそうになったけれど。何故か何も言えなくなってしまった。
佳孝さんから、少し苦しそうな表情が見えた気がして。
でも、すぐに抱きしめられてそれ以上見ることはできなかった。
「あずさ……」
ほんの数時間。それだけのためにこうして会いに来てくれて。私を抱きしめてくれる。
「好きだ、あずさ」
この日は、激しさよりお互いを確かめ合うみたいに抱き合って。
その後は限られた時間をずっとその腕に抱き締められていた。
「……忙しいのに、急に来たりして悪かった」
背中にぴたりとくっついた素肌から規則的な鼓動が伝わる。低い声の振動も一緒に私に伝えて来た。
「また、お互い急に会えなくなるような状況になるかもしれない。だから、どうしても。会える時に会っておきたくなったんだ」
その声が、甘く囁くものではなくどこか切実だったから、思わず身体をくるりと回し佳孝さんと向き合った。
「大丈夫です。パリとモスクワなら3時間ちょっとだって、佳孝さんも言っていたでしょ? どうしても会いたくなったら、すぐに会いに行けます」
「そうだったな……ごめん」
真正面から見つめると、その表情が緩んだ。
「自分がそう言ったんだった」
私の大好きなその大きな手のひらが、髪を優しく撫でる。