囚われのシンデレラーafter storyー
休んでいた分の授業を取り戻すために勉強して、その間にはもちろんレッスンもあって。何より練習しなければならない。
それだけではなく、音楽院側から学生向けにリサイタルをするよう依頼されたりもした。
そんなことをしていればすぐに10月中旬になって、東京でCD発売のイベント、ミニコンサートを行う日が来た。
「ミニコンサートの整理券、あっという間に全部なくなったわ。やっぱりテレビの力は凄いわね。出演した日以来、反響が大きいのよ。ネットの検索ワードの上位にも名前があがったことがある。東京公演のチケットも、もう残席わずかよ」
植原さんが喜んでいる。
CD発売イベントは、銀座にある大きな楽器店内に併設されたホールで行われる。学生の時、一度ここで演奏したことがあった。
そう言えば、あの時も、佳孝さんが見に来てくれたんだ――。
楽屋からホールへと向かう。
舞台へと足を踏み出すと、客席はすべて埋まっているのが分かった。
CDに収録した曲のうち数曲を、20分間ほど演奏した。
どれも、耳になじみのいい曲。一度は耳にしたことがあるような、有名な曲を集めたCDになっている。
クラッシックを特別好きな人でなくても、手にしやすいものになっていた。
私の演奏を聴くために、足を運んでくれた人たち。CDを買ってくれる人たち。
生の音を届けるために。すぐに消えて行く時間で奏でて行く音を、この時間を共有している人たちに届けるために、その音一つ一つに心を込めた。
すべての演奏を終え頭を下げると、会場いっぱいに拍手が鳴り響いた。
ドレスのままでテーブルへと連れて行かれ、そこで希望者にはCDにサインをする。
「すごく、素敵でした!」
「ありがとうございます」
一人一人にお礼を言ってCDを手渡した。
小さい子からお年寄りまで、男の人も女の人もいて、こんなにも私のことを知っていてくれる人がいるんだと思うと、まだどこか他人事のようだった。
サインをしている自分なんて、誰が想像しただろう。
「今日はお疲れ様。また明日事務所で」
「はい。ありがとうございました」
イベントを終え、控室を出た。
控室の扉を閉め、廊下を歩きだそうとした時――。
「わぁっ!」
そこにいた人に驚いて、失礼にも声を上げてしまった。
「そんな、化け物を見たみたいな顔をするな」
「す、すみません」
松澤さんがそこに立っていたのだ。