囚われのシンデレラーafter storyー


 翌朝、佳孝さんと電話で話をした。東京とパリの時差の関係で、平日はこの時間が一番佳孝さんの迷惑にならない。

(CD送ってくれてありがとう。早速、暇さえあればずっと流している。あずさの名前が入っているCDだから、ジャケットを見ているだけで感慨深い)

発売より前に手に入ったCDを佳孝さんに送ってあった。

「プロ……になれたんですよね。佳孝さんと一緒にこの時を迎えられたことが嬉しいです。それと、聞いてください!」
(どうした? 何かあった?)
「はい。昨日、松澤さんがイベントをした会場に来ていて。私の音を聴いてくださったんです。それで、甘ったるすぎてもたれそうだけれど、音は絶品だと言ってくれたんです」

以前、私の生の音を聴くまでは実力は判断できないと言われたということを佳孝さんにも伝えていた。

だから、その結果についても報告したいと思ったのだ。

(『甘ったるい』というのは気になるが、でも、予想通りだ。あずさの音を聴けばすぐに分ると言っただろう?)
「はい。昨日は、いろいろとお話することができてとても刺激になりました。最初はただその威圧感に委縮していたんですけど、話してみれば本当に音楽を愛している熱い方で。気付けば、2時間も話し込んでいました」

その驚きとギャップを伝えたくて、興奮気味に話をしていた。

(それは、二人で……か?)
「はい。私の演奏についてとか、これからのこととか、いろいろとアドバイスをもらうことができました」

少しの間の後、佳孝さんの声が耳に届く。

(……そうか。指揮者と上手くコミュニケーションを取ることも、コンチェルトをやるにあたっては必要なことなんだろう? 良かったな)
「そうですね。意思疎通がうまく行っている方が、間違いなくいい演奏になります。今度のコンサート、絶対にいいものにしたいって思ってます」

松澤さんと話をして、よりその気持ちが高くなった。

(しっかり頑張れ。応援してる)
「うん。頑張ります」

少し苦しくなった時も、嬉しいことがあった時も。佳孝さんは私に寄り添い、励ましてくれる。

佳孝さん、精一杯頑張るから――。

電話を切った後、その気持ちを新たにした。

私は、ただ、それしか考えていなかった。

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