囚われのシンデレラーafter storyー


 公演主催者から準備してもらったホテルに夜遅くにチェックインをして、すぐに佳孝さんに電話をした。

 佳孝さんが、パリ滞在中はアパルトマンにいればいいと言ってくれたけれど、せっかく楽器演奏可能な部屋を準備してくれた心遣いを断るわけにはいかなかった。それに、公演を前にしていつでも練習できる環境はありがたい。

(――明日、練習がある場所に迎えに行く。その後夕飯を一緒に食べるくらいは大丈夫かな?)
「もちろんです。私も、佳孝さんに会いたいです。どうせ夕飯は食べなくちゃいけないんですから。こっちこそ、そんな隙間時間だけでごめんなさい」

佳孝さんが私の時間を考えてくれて、夕食だけでも付き合ってくれることを提案してくれたのだ。

「誕生日は、ゆっくり二人で過ごせるように佳孝さんのアパルトマンに泊ってもいいですか?」
(いいに決まっているだろ?)

そう言って、佳孝さんが笑った。

 12月1日は、オケとの合わせがあるけれどそれも夕方前には終わる。その後、十分二人でお祝い出来る時間はある。それに翌日から数日は完全にオフだ。

 佳孝さんとずっと会わずにいたのだ。誕生日だけは、練習よりも佳孝さんとの時間を優先したい。

電話を切った後、ベッドに寝転がりながらパリ公演の日までのスケジュールを改めてチェックした。

明日、パリ管弦楽団との顔合わせ――。

その翌日は、オケの練習場となっているホールを借りられるからそこで自主練習。その次の日と12月1日がオケとの合わせだ。そこから、少しオフがあって本番前のリハーサル、本番へと続いて行く。

 スーツケースを広げ、厳重に保護したラッピングされた箱を取り出す。

 日本で選んで来た、ネクタイ。何にしようかと本当に悩んだ。悩んで悩んで。どうせなら身に着けてもらうものがいいと思った。
ネクタイにしようとようやく決めても、そのネクタイを決めるのにまた悩みまくった。
いつも素敵にスーツを着こなしているから、佳孝さんに相応しいものを選べているか不安だけれど。

「ありがとう」と喜んでくれるのを想像して、一人ワクワクする。

やっと。やっと、明日会える。早く会いたい――。

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