囚われのシンデレラーafter storyー
そこからほど近いレストランに二人で入った。
目の前に、佳孝さんがいる。本物の佳孝さんと話をしている――。
「たった2か月半なのに、もう何年も待っていた気分だ」
表情が動かない時の佳孝さんは精悍でどこか冷たい顔つきなのに、そうやって笑うと本当に本当に甘くなる。
「すみません。結局、9月から全然会えないままで」
「もういいんだ。こうして今、会えている」
仕事帰りすぐに駆け付けてくれたのだ。久しぶりに見るきっちりとスーツを着ている佳孝さんの姿。もう、それだけでもきゅんとする。
「本当はもっとゆっくり会えたら良かったんですけど……。ごめんなさい」
「バカだな。これから大切な本番を控えているんだ。こうして会えるだけで、俺は嬉しいんだよ。この後、ちゃんとホテルまでタクシーで送るから」
「ありがとうございます。誕生日と公演が終わった日はゆっくり会えますから」
今からその日が待ち遠しい。
「それにしても、どうしてあずさの宿泊するホテルはうちのホテルじゃないんだ? どうせならクラウンに泊ってほしかった。ご利用いただけなくて残念です」
「そうですよね、ごめんなさい!」
本気で謝る私に、佳孝さんが吹き出した。
「嘘だよ。そもそもあずさに決定権なんてなかっただろ」
「そうだけど。でも、私も泊ってみたかった」
「では、今度、特別にご招待いたします」
「はい。楽しみにしています」
お互い顔を見合わせて、笑った。佳孝さんの顔を見れば、疲れなんて吹っ飛ぶ。
「東京公演の記事、読んだよ。こんなに才能のある人間が、これまで一体どこに隠れていたんだって、驚きと讃辞の言葉が並んでいた。本当に大成功だったんだな」
その目が、いろんな表情を作って。
その唇が、私に言葉をくれる。
「新たな境地にたどり着けた、そんな感じでした。パリ公演、楽しみにしていてくださいね。東京よりさらに進化させますから。そうだ。東京公演に、細田さんが来てくださったんです。会えなくて残念だったんですけど、凄く嬉しかった。お花のお礼を言いたいです」
「ああ、細田さんからメールが来ていた。感動して感動してハンカチが一枚では足りなかったと書いてあった」
「そんなに泣いてくれたの?」
「なんだか、目に浮かぶよな」
二人で笑い合える時間は、佳孝さんを想う一人の女としてただただ幸せな気持ちでいっぱいにさせてくれる。