囚われのシンデレラーafter storyー
空港前からタクシーに乗り込み、西園寺さんがどこか行先を告げた。
車が走り出し、ようやく一息つくことが出来た。
「飛行機、疲れた?」
「いえ。パリまで4時間かからないから。日本に帰るよりずっと楽です」
それに、楽しみ過ぎて飛行機の中でずっとニヤニヤしていたし……。
なんてことは、絶対に気付かれたくなくて思わず顔を逸らしてしまう。
「そうか――」
でも、そう言った西園寺さんの声があまりに優しいもので、思わず顔を向けた。
その目はダメ――。
ダメなやつだ。
私の中にある記憶が蘇る。そして、過去に遡って行く。
躊躇いなく真っ直ぐに、私に想いをくれた頃の、あの視線――。
10年前、西園寺さんと一緒にいた頃の、ただお互いのことだけを見つめていた時の眼差し。
苦しみも、嘘も、葛藤も。
そんなフィルターを通さずに、私を愛おしそうに見つめてくれる、私を甘く甘く幸せにしてくれる、西園寺さんの目だ。
西園寺さんの葛藤は、もう、その心の中から完全になくなったと思ってもいいだろうか――。
「今日は、食事をしたら俺の部屋に戻ってゆっくり休もう。明日、明後日と仕事が休みだから、パリを巡ろうかと思っている。あずさは、パリは初めてだって言うからとりあえず王道のコースを考えたんだけど、それでいいか?」
「はい。初海外がモスクワだったくらいなので、とっても楽しみです」
「もし、何かリクエストがあれば言ってくれ」
西園寺さんの柔らかな表情が、私を深く安堵させる。
私が今、とても幸せを感じているのと同じように、西園寺さんも幸せな気持ちでいてくれたらいいな――。