囚われのシンデレラーafter storyー


 どこにもやり過ごせないドロドロの感情が心を埋め尽くして。この、振り払っても振り払っても追いかけて来る”惨めさ”が心を蝕む。

他人に言われたことなんて、気にしなければいい。俺とあずさのことは二人にしか分からない。

なのに、突きつけられた言葉すべてに感情をかき乱されているのは、何より自分だ。
どれだけ自分にそう言い聞かせても、あの男の声が消えてくれない。

「――上に載ったこんがりチーズがたまらないですね。今日も寒かったから、このアツアツが身体の芯まで温まります。この料理、タルティフレットって言うんですよね?」

――こう言っては失礼ですが、あなたのお父様は罪を犯した人間であり、確かいまだ執行猶予中の身のはずだ。そんなものを今の彼女に背負わせようと?

俺はあの男と違って何も持っていない。何もないどころか、むしろ、あずさの足枷になるものばかりを持っている。

今さらだろ――。

本当に馬鹿だ。そんなこと、最初から分かり切っていることだ。

「佳孝さん? 聞いてますか?」
「え……っ、あ、ああ。ごめん、なんだっけ」

真向かいに座るあずさが、俺をじっと見つめていた。

「佳孝さんが頼んでくれたこの料理、凄く美味しいねって――それより、どうしたんですか? 食事も全然進んでいないみたいですけど……」
「別に、何でもないよ。これは、タルティフレットだな。フランスのメジャーな家庭料理だ。チーズがポイントなんだよ」

慌てて笑顔を作ってもあずさが俺を怪訝な目で見つめたままでいるから、その料理を口に運んで見せた。

「あずさの言う通り、いい味付けだ。濃くも薄くもないちょうどいい味付けで、いくらでも食べられる」
「そうですよね?」

そうしたら、ようやくその表情に笑みが戻った。

「……それで、今日の練習どうだった?」

さりげなく、そう問いかける。

「今日、初めてのパリのオケとの合わせで緊張したんですけど、松澤さんのおかげで、本当にバッチリだったんです!」

フォークとナイフを置き、少し興奮気味にあずさが言った。

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