囚われのシンデレラーafter storyー
「……頑張れよ」
優しく理解のある大人の男を演じて。その下で、無様にもがく。
「はい。佳孝さんに、初めてプロとしての私を見てもらうんです。精一杯頑張ります」
料理の味なんてまるでしない。
ただ、じっと、胸の中でとぐろを巻くドス黒い感情を鎮めさせようと必死だった。
それなのに――。
心は全然言うことを聞かない。
「……明日も、松澤さんはいるんだよな?」
あずさをホテルまで送り届けるタクシーの中で、そんなことを問い掛けていた。
「ええ、それは、もちろん。それが、どうかしましたか?」
「いや。ただ、聞いただけだ」
この日目の当たりにした松澤の姿がちらつくのだ。男の俺から見ても魅力的な男だった。
才能と自信に溢れた、あずさと同じ世界にいる男――。
今日より明日、明日より明後日。
その尊敬が、違うものに変わって行ったら?
松澤が、あずさにその想いを隠さなくなったら……?
俺に、何ができる?
タクシーがホテルの前に止まる。
「送ってくれて、ありがとうございました。明日は――」
「今日は、もう少し一緒にいたい。いてくれないか……?」
くだらない感情に苛まれて、帰ろうとするあずさの手を掴んでしまっていた。