囚われのシンデレラーafter storyー
点滴の効果はもちろんのこと、深い眠りにもついたせいで、身体はかなり回復していた。重怠さが抜けている。
「今日は、本当にありがとうございました」
会計を済ませて病院を出ると、改めて松澤さんに頭を下げた。
「もう、礼はいい。それより、とにかく体調を完全に回復することを考えてくれ」
いつもは目力の強い松澤さんの視線は、微妙に私から外されている。
「はい。リハーサルまでにしっかり体調も戻して万全にしたいと思います。では、ここで失礼します」
そう言って別れようとすると「待て」と呼び止められた。
「私もどうせタクシーで事務所に戻る。乗って行きなさい」
「いえ、私は――」
「君の宿泊するホテルは通り道なんだ。それに、ついさっきまで横になっていた身体だぞ。いいから、言う通りにしろ」
そう言うと、タクシーを止め乗り込んでしまった。
「じゃあ……すみません。お願いします」
この人が、見た目や言葉と違って面倒見がいいことはなんとなく分かって来た。
ここで、必要以上に遠慮するやり取りをするのも時間の無駄だろう。そう思って、素直に乗り込むことにした。
行先に私の宿泊するホテルを告げると、松澤さんは黙り込んでしまった。窓の向こうを、ただじっと見ている。
なんとなくこちらからも話し掛け難い雰囲気で、私も黙ったままでいた。
それからほどなくして、タクシーはホテルの前に到着した。
「松澤さん、ありがとうございました。タクシー代を――」
「そんなもの、君から取るわけがないだろう。通り道だと言ったはずだ」
そう言って突っぱねられる。
「……すみません、ありがとうございます。失礼します。では、またリハーサルで」
挨拶をした後タクシーから降りると、松澤さんが運転手さんに何かを告げて、何故か自らも車を降りた。