囚われのシンデレラーafter storyー
「そ、そんなに?」
凄過ぎる――!
「必要だったから。人間、追い詰められると出来るようになるものだよ。大学卒業して数年、身一つで世界中のホテルで働いたんだ。その度に現地の言葉を覚えた。ただ、それだけだ」
頬杖をつきながら、西園寺さんが微笑む。
そう言えば、7年ぶりに再会したばかりの時、日本に帰国して間もないと言っていた。
『身一つ』とはどういう意味だろう。
「海外って、センチュリーホテルで働いていたんじゃないんですか?」
「後半はそうだけど、最初の数年は全然別のホテルだ。守られた場所じゃない、過酷な状況に身を置きたかったんだろうな。まあ、いかにも若造が考えそうなことだろ?」
それは、私と別れた後、ということになる。
そんな状況に敢えて身を置きたくなるくらい、西園寺さんの傷は大きかったということ――。
「――あずさ」
過去に思いを馳せていると、テーブルの上の私の手のひらを西園寺さんがとんとんと指で触れた。
「あずさには辛い思いをさせてしまった。その過去は変えられない。でも、俺があの時した経験は、全部が無駄だったわけではないと思う。おかげで、こうして仕事にもありつけているし。恵まれた世界しか知らなかった俺が、サバイバル力を身につけることが出来た。どこででも働ける自信があるよ」
穏やかな表情で、そう言った。
その表情は、これまでの自分の人生のすべて受け入れ消化して、たどり着いたものなのかもしれない。
そう思うと、どんな経験もその人を作り上げる要素となっていくのだと分かる。
私だって、そうだ。
「本当に、どんな出来事も全部、自分の中にあるんですよね。いいことも、悪いことも」
「ああ」
そして、こうしてまた西園寺さんと向き合えているんだ。
「でも、俺がそんな風に思えるのは、やっぱり、またこうやってあずさといられるからなのかもしれない」
どこをどう遠回りをしても、たどり着く先は西園寺さんだった。
それから西園寺さんは、自分が働いたいろんな国での出来事をたくさん話してくれた。
高級ホテルだけじゃない、貧困地域でも働いていたという。どの話も、夢中になって聞いていた。