囚われのシンデレラーafter storyー
「とにかく、ゆっくり休むんだ。早く、ベッドに入って」
「ちょっと、待ってください」
佳孝さんが私の肩を支えるようにして、私をベッドへと連れて行こうとする。
「佳孝さん、松澤さんと話をしたこなんてありましたか? そんな話、佳孝さんにも松澤さんにも聞いていない」
そんな佳孝さんに抗うように向き合った。
「それは……俺とあずさが二人で帰って行くのを見かけたみたいで。俺の顔を二年前の報道で見て覚えていたらしい。あずさを1階のラウンジで待っている時に、声をかけられて少し言葉を交わした。その程度のことだ」
「そうだったんですか……」
松澤さんが佳孝さんのことを知っていたなんて――。
佳孝さんが、二年前に騒がれていた事実があることを思い出す。
佳孝さんと過ごして来た穏やかな毎日が、そんなことを忘れさせていた。
「あずさが練習中に倒れたことをかなり心配していた。俺も同じだよ。あずさの身体が心配だ」
「倒れたなんて、松澤さんが大袈裟なんです。少し立ちくらみがしただけ。病院で点滴してぐっすり眠ったら、あっという間に回復したんです」
佳孝さんの不安をとにかく取り除きたくて、そう訴えた。
「あずさ」
私の背中に手を添えベッドに腰掛けさせると、その隣に佳孝さんも座り私の手を握りしめる。
「実際がどうであれ、オケの指揮者である彼に心配をかけた。それは事実だ。それに、あずさに疲れが溜まっていたというのも事実。そうだな?」
「それは、そうですけど……でも――」
「今、あずさにとって一番大事なのは、しっかり休んで体調を万全にすること。それが、心配をかけた人たちに対してするべきことだ」
「それは分かっています。でも、今日は特別なの。佳孝さんの誕生日だけは、祝わせてくれますよね?」
この日のために、練習も計画的にして来たのだ。
佳孝さんに頷いてほしくてその目を必死に見つめるけれど、表情を緩めてはくれなかった。