囚われのシンデレラーafter storyー
「ふと目が覚めちゃって。少し話してもいいですか?」
(ああ、いいよ。あずさはちゃんとベッドの中にいる?)
「はい、横になってます。佳孝さんは?」
(俺も、ベッドの中だ)
眠る前の、佳孝さんの少し掠れた夜の声。すぐ隣にいてくれているみたいだ。
「一週間遅れくらいにはなってしまうけど、最高のチャイコフスキーを佳孝さんの誕生日プレゼントに贈ります」
(それは凄いな。大勢の客の中で聴きながら、『これは俺のための演奏なんだぞ』って心の中で優越感に浸れる)
そう言って、佳孝さんが笑う。
「しっかり頑張るから」
(あずさが、初めてプロとして世界の舞台に立つんだ。パリ公演、ずっと楽しみにしているんだぞ。この目にも耳にも焼き付けるさ)
鼓膜から身体の奥深くまで、佳孝さんの声が入り込んで行く。
(あずさ)
「ん?」
寝返りを打って佳孝さんに耳を傾けた。
(これから先、あずさもいろんな経験を経てキャリアを積んでいく。今は、その第一歩だ。初めてのことで、今はお互い手探りだけど、これから一緒に過ごして経験していく中で、二人なりの寄り添い方を見つけて行きたい)
「佳孝さん……」
(俺は何があっても、あずさといるから。あずさがどこで活躍しても、俺はいつでも待っている。だから。思い切り頑張れ)
「……うん」
今度は、嬉し涙が込み上げそうになって、短くそう答えた。