囚われのシンデレラーafter storyー


「今すぐにというわけではないが、いずれ、日本に戻ることになる。今までのように、誰も知らない場所で自分が背負うものに目を向けずに生きていくことはできなくなる」

日本に戻る――その言葉の続きに、知らず知らずのうちに自分の手のひらを握り合わせていた。

「最悪の場合、父の病気とともにまたマスコミに報道されるかもしれない。そうしたら、過去を蒸し返される。その時、何をきっかけにあずさを巻き込むかも分からない。2年経とうと10年経とうと、消えない過去を持ってる。俺は、そういう男だ」

その目をじっと見つめ返す。佳孝さんの眼差しはどこまでも真っ直ぐなのに、その目の奥に苦悩が透けて見えてしまう。

いつも、私といる時。
とびきりの甘い愛情を惜しみなくくれる。包み込むように優しく、時には背中を押して。

自分の苦悩を隠し、私を愛してくれる優しい人だ。

「これからのあずさにとって、もっといい男がいる。俺なんかより、あずさを支え助けになる男が現れるかもしれない。そう思うのに――」

私を見つめる目が、わずかに歪む。

「ダメなんだ。どうしても、この手を離せない」

佳孝さんが私の手を取り握りしめた。

「以前のように、手放したりできない。手放すことでではなく、一緒にいることで愛したい。嫌と言うほど苦労させるかもしれない。でも、あずさといたいと、言ってもいいか?」

そう言った、葛藤にまみれた佳孝さんの表情に胸が苦しくなる。

もう、そんな顔しないで――。

私は、耐えられなくなって、
腕を伸ばした。

< 229 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop