囚われのシンデレラーafter storyー
「佳孝さん!」
「人が説明しているのに、ちゃんと聞いてないのはどうかと思うぞ」
「ごめんなさい。続き、ちゃんとやりますから下ろして――」
「ダメだ」
即答。
「重いですよ」
「あずさ一人くらい、重くもなんともない」
腰に回された手がしっかりと身体を支え、もう片方の手が何故か私の頬から耳に掛けて触れている。
「あ、あの、くすぐったくて、上手くできないんですけど――」
佳孝さんの指が私の耳たぶにかかるから、思わず肩をすくめてしまう。
「こっちのことは気にしないでやってくれ」
懸命にネクタイの結び目を整えようと手を動かすけれど。
気にしないでって――。
「んっ……ん」
やっぱり。
明らかに、その指は違う意思を持ち始めている。
「耳、だめ――」
「手が止まってるぞ」
「だ、だって……っ」
今度は唇が近付いて囁かれれば、その吐息までもが耳たぶを弄る。
完全に、私を困らせようとしてる――。
耳から全身へと行き渡っていってしまう快感を懸命にやり過ごすため、目一杯顔に力を込める。
そして、どれだけ指が撫でても唇が触れても、この手にだけ神経を集中させる。
「……顔真っ赤にして。ホントに、あずさは可愛いな」
散々困らせて、喜んで。そして、そんな風にして、魂根こそぎ持って行かれちゃいそうな甘くて意地悪な笑みを私に向けるのだ。
「真っ赤にさせているのは、誰だと思って――」
それでも、何とか抗議してみるも――。
耳に触れていた佳孝さんの手のひらがそのまま私の頭をぐいと引き寄せると、抗議しようとしたこの唇を強引に塞いだ。