囚われのシンデレラーafter storyー


 意地悪だったのに、どこか切羽詰まったようなキス。

覆うように塞がれた唇はすぐにこじ開けられて、呼吸もままならない。

「――ん」

佳孝さんの手のひらががっちりと私の頭を掴んで身動きできない。

息が苦しくなる限界のところでちょうど離れるけれど、角度を変えて入り込んで来て。
貪るようなキスに脳からじんとして、与えられる激しい刺激に溺れる。

力を奪われた身体を、その腕が抱き留める。
気付けば、佳孝さんの首に腕を回し、自らも求めるように舌を絡める。

好き。大好き。愛している――。

そんな言葉じゃ収まらない感情を抱えているのに、そんな言葉でしか表せない。正確な言葉が見つからないから、抱きしめてキスをしてその身体に触れる。

「――あずさ」

堪えるような声が、触れ合った唇から漏れる。

「これ以上したら、このまましてしまいそうだから……」

ゆっくりと顔を離すと、佳孝さんが心の底から困ったような顔をしていた。

「ダメだ。ダメだ。それはまずい。あずさがせっかく買って来てくれたチョコレートも食べたい。ワインももっと一緒に楽しみたい。もっと話もしたい」
「佳孝さん……」

私の肩を掴む手のひらに、ぎゅっと力が込められる。

「――本当に俺は、どうしようもないな……」

そうかと思ったら、今度は大きくふっと息を吐き、項垂れた。

「あずさが半径30センチ以内に入って来たら、押し倒したくなる。いや、1メートルかもしれない。かと言って、離れていたら呼び寄せたくなる。呼び寄せたら抱きたくなってしまうし。結局、いつも、あずさとしたいってことだな」
「いつも……ですか? そんなの嘘」
「嘘? 嘘だと思うか? じゃあこのまま抱き倒そうか」
「や、やっぱり、チョコレート一緒に食べましょう!」

その肩を少し押すと、佳孝さんが笑った。

「ああ。本当の楽しみは後に大事にとっておこう。それも、またスパイスだな」
「……」
「なんだ? その目は。俺の事、ただのエロボケだと思っているんだろう」
「え、えろ――そんなこと、一度も思ったことはありません」

真剣に訴える。

そんなこと言ったら、私は何という?

佳孝さんを見ているだけで、おかしな気持ちになるというのに。

< 237 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop