囚われのシンデレラーafter storyー


「でもまあ、事実だから。恋人がエロボケで申し訳ないが、諦めてくれ。決して口には出せない、恐ろしいことをいろいろ想像していたりするから」

私を膝に抱えながら、そんなことを言う。

「恐ろしいことって……」

そんな端正な顔立ちで言われても、何の説得力もない。

「言えないから恐ろしいんだよ。確実にあずさが引く。そんなことで心が離れては困るから、絶対に言わない。でも……」

その視線がふっと逸れて、そして怪し気に光を宿して私を見上げた。

「そのうちの一つは、今日実現させてしまおうかと企んでいる」
「え――」
「それはさておき、あずさの言う通りチョコレートを食べよう」

一体、何――?

想像などまったく出来なくて、少し怯える。


 でも、それから二人でワインを飲んで、チョコレートを口にして。

「ちょうど、こういうデザインのネクタイは持っていなかったんだ」
「だったら良かった」
「このチョコレート甘過ぎなくていいな。ワインとも合う」

なんて会話をして。
それが全部私を自分の膝の上に座らせたままだということを除いては、いたって怪しい要素はない。

 そして。それ以上のことはなく、「今日は大きな公演をしてきたんだ。疲れただろう。ゆっくり風呂にでも入ってくればいい」
なんて言って。

優しい笑顔で私に着替えを貸してくれ、バスルームへと送り出してくれて――。

佳孝さんがお湯を溜めてくれたバスタブに身体を埋めて考え込む。

一体なんだろう。言えないような恐ろしいことって……。

顔を半分まで湯に沈め、あれこれと考えてみる。

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