囚われのシンデレラーafter storyー




 私を、甘く優しい眼差しが包み込む。汗で頬に張りついたおくれ毛を、大切なものでも触れるようにかきあげた。
 激しく抱かれるのも、こんな風に優しく触れられるのも、どちらも、たまらなく私を幸せな気持ちにする。

「……この先、どれだけ苦労をかけたとしても。あずさを不幸にはしない。それだけは、約束する」

心地よさに満たされた気怠い私の身体を胸に抱きながら、佳孝さんが言った。

「佳孝さんといられれば、苦しいことがあっても、それは不幸じゃないから。二人で、どんなことも乗り越えて行こうね」

私がそう答えると、佳孝さんが私の髪を撫でながら、嬉しそうに微笑んだ。

「俺といることを選んだあずさを後悔させないために、あずさが少しでも笑っていられるように、俺はあずさのそばにいる」

狭いソファの上できつく抱きしめ合うと、そっと私の顎に指が添えられ優しく唇が重なった。


 この先の人生を二人で歩いて行くと決めてから、再びそれぞれの生活に戻って行った。

 佳孝さんは、病状の心配なお父様のため、休日のたびに帰国していた。

 私は、年明けに残り一つの公演、モスクワでのコンサートを控えている。それは、コンクールのファイナルの演奏の時と同じ指揮者で同じオーケストラ。モスクワで学んでいる身として、聴きに来てくれる人たちの期待が大きい。

モスクワ(ここ)で私は2年学んだ。その集大成を、育ててもらったモスクワの地で見せたい。

そう考えていた。

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