囚われのシンデレラーafter storyー
モスクワ公演も近いことから、その年の年末は日本に帰ることを断念した。
モスクワ公演を終えればしばらく時間が出来る。今はバイオリンに集中しなければならない。
ただ、そのせいで、年末年始で日本に帰国している佳孝さんとは会うことができなくなった。
「そちらはどうですか?」
その代わりに、大晦日、こうしてスカイプで話をしている。
「ああ、なんとかな。いい医者が見つかって、いい方向に向かいそうではある。主治医を変えることが悪い影響を与えたらと不安もあったんだが、幸いなことに父親と新しい医者の相性がいいみたいだ」
「それは良かったです。少しずつ、焦らないで、治していけるといいですね」
画面の向こうの佳孝さんの表情からも、少し安心しているのが伝わって来てホッとする。
「そうだな。とにかく見守る方が焦りを見せてはいけないそうだから。何より自分がどんと構えていたいと思う。でも、少しだけ、肩の荷が軽くなった」
確かに、私にお父様の話を打ち明けてくれた時より、穏やかな表情になっている。
「それは、あずさのおかげだ」
「私は、何も。今回だって、年末年始だというのに、何の力にもなれなくて申し訳ないです」
佳孝さんの言葉に恐縮する。
「あずさに、こうして父のことを話せるだけでも俺にとっては心が楽になっているんだ。これまでは、誰かに話すことも出来なかった。俺のことをまるごと受け入れてくれる、そんなあずさの存在に救われているよ」
もっと近くで佳孝さんの力になりたい。