囚われのシンデレラーafter storyー
チャイコフスキーコンクールのファイナルと同じ会場。ここから始まった。
私のバイオリニストとしての道も。そして、佳孝さんとの新たな関係も。
ここで、私のすべてを伝えたい――。
ソコロフ先生も、音楽院での担当の先生も、そして同門の友人たちも、皆が聴いてくれていた。
”アズサ、震えたよ。これまで、たくさんの演奏を聴いてきたけれど、ここまで震えたのは初めてよ”
演奏後、友人たちが私を讃えてくれる。
”君の素晴らしさが進化していくのをこの目で見ながら、君の存在はどんどん遠くなって行った。君は、今の僕では決して手の届く人ではなかった”
マルクがそう言った。
”――でも、僕も君に負けているつもりはない。バイオリンで、必ず追いついてみせる”
私が頷くと、いつもの人懐っこい笑みをくれた。
”本当にありがとう。君を指導した私自身を誇りに思えるよ”
ソコロフ先生が満面の笑みで私の肩を叩く。
”あの時、ヨシタカが言っていたことが本当のことになったな。君へのレッスンの依頼を受けた時、私は、ヨシタカの凄まじいまでの揺るぎない信念に根負けしたんだよ。でなきゃ、名もないブランクまである人間をレッスンしようだなんて思わないさ”
ソコロフ先生の笑みに、あの頃のことを思い出す。
観客のほとんどが帰った後、ロビーで友人や先生に囲まれていたその時――。
”あれ……ヨシタカじゃないか?”
”え――?”
ソコロフ先生の顔が、ロビーの入り口の方に向けられる。
今日は、佳孝さんは仕事で。来るなんて聞いていない。
ソコロフ先生の視線を辿ると、確かに、正面の入り口から入って来る佳孝さんの姿が見えた。
黒いコートを身に纏う、すらりとした姿――。
”どうしたかな? アズサを迎えに来たのか?”
ソコロフ先生のニヤリとした笑みが再び私に向けられる。
”え? アズサの恋人?”
友人たちが色めきだつ中で、ソコロフ先生が”ヨシタカ!”と声を張り上げた。