囚われのシンデレラーafter storyー

「分かった。じゃあ、今、言ってみて?」
「は、はい。え、えっと――」
「それなら、言えるんだろ?」
「もちろんですよ。はい、じゃあ――」

ただでさえ緊張するのに、その目が至近距離からじっと私を見ている。

どうしてなの――?
ただ、名前を呼ぶだけなのに。どうして、こんなにも口元がむずむずとしてしまうんだろう――!

「よ、した、かさん」

ようやく絞り出したものの――。

「それじゃあ、なんのことを言っているのか分からない」

確かに。
区切り方がおかしくて、原形が何だかわからない。

「よしたかさん!」

勢いで乗り切ってみた。

「早口過ぎて、分からない」
「よしたか、さん」
「棒読みだな」

深呼吸して、口を開いた。

「……佳孝さん」

今のは、大丈夫だったはず――。

「硬いな」
「え……っ? 今のもダメですか?」

がっくりして、改めて西園寺さんの顔を見ると――笑いをこらえていた。

「――ごめん。ただ、あずさに呼ばせたかっただけ」
「……え?」

その目を見つめる。

「初めて、名前を呼んでくれたから、何度も呼ばせたくなった。そうしたら、真面目に何度も言い方を変えるあずさが可愛くて。ずっと見ていたくなって、少し意地悪した」

ごめんと、言って口元を押さえている。

「ひどい……私、必死だったんですよ」
「ごめん。ほんとに、ごめんな」
「もう――っ」

西園寺さんの胸を叩く。

大真面目に、何度も呼んで。

恥ずかしい――!

「ごめん、ごめん」

そう言って、私を抱きしめた。

「もう、知りません」
「――嫌いになった?」

私の肩を掴み、不安げに顔を覗き込んで来る。
そんな目で見るのは、反則だ。

「……好き」

絶対、敵わないんだから。

「――」

何故か、西園寺さんが一瞬固まって。

「ホント、もう、勘弁してくれ。俺を、悶え殺すつもりか?」

がばっと、私を抱き潰すように固く腕の中に閉じ込めた。

< 33 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop