囚われのシンデレラーafter storyー
「分かった。じゃあ、今、言ってみて?」
「は、はい。え、えっと――」
「それなら、言えるんだろ?」
「もちろんですよ。はい、じゃあ――」
ただでさえ緊張するのに、その目が至近距離からじっと私を見ている。
どうしてなの――?
ただ、名前を呼ぶだけなのに。どうして、こんなにも口元がむずむずとしてしまうんだろう――!
「よ、した、かさん」
ようやく絞り出したものの――。
「それじゃあ、なんのことを言っているのか分からない」
確かに。
区切り方がおかしくて、原形が何だかわからない。
「よしたかさん!」
勢いで乗り切ってみた。
「早口過ぎて、分からない」
「よしたか、さん」
「棒読みだな」
深呼吸して、口を開いた。
「……佳孝さん」
今のは、大丈夫だったはず――。
「硬いな」
「え……っ? 今のもダメですか?」
がっくりして、改めて西園寺さんの顔を見ると――笑いをこらえていた。
「――ごめん。ただ、あずさに呼ばせたかっただけ」
「……え?」
その目を見つめる。
「初めて、名前を呼んでくれたから、何度も呼ばせたくなった。そうしたら、真面目に何度も言い方を変えるあずさが可愛くて。ずっと見ていたくなって、少し意地悪した」
ごめんと、言って口元を押さえている。
「ひどい……私、必死だったんですよ」
「ごめん。ほんとに、ごめんな」
「もう――っ」
西園寺さんの胸を叩く。
大真面目に、何度も呼んで。
恥ずかしい――!
「ごめん、ごめん」
そう言って、私を抱きしめた。
「もう、知りません」
「――嫌いになった?」
私の肩を掴み、不安げに顔を覗き込んで来る。
そんな目で見るのは、反則だ。
「……好き」
絶対、敵わないんだから。
「――」
何故か、西園寺さんが一瞬固まって。
「ホント、もう、勘弁してくれ。俺を、悶え殺すつもりか?」
がばっと、私を抱き潰すように固く腕の中に閉じ込めた。