囚われのシンデレラーafter storyー


 ジーンズに洗いざらしの白いシャツを急いで着て、無造作に髪を一つに結ぶ。そして斜めがけのバッグとバイオリンケースを手にしてアパルトマンを出ると、西園寺さんが近くのカフェに連れて行ってくれた。

「――すみません。10時過ぎなんて、いくらなんでも寝坊し過ぎですよね」

パリのカフェにはオープンテラスが併設されているところが多い。

通りに面した席に向かい合って座る。
時間が時間なだけに、朝食と昼食を一緒にしてしまうことにした。

「もっと早く起こしてくれても良かったのに」

私が目覚めた時には、既に西園寺さんは起きていた。ということは、私より早く起きていたことになる。

「気持ちよさそうに寝ていたし。その寝顔を見てたら、あんな時間になっていた」

コーヒーカップを手にしながら、西園寺さんがそう言う。

寝顔を見られていた――。

見られても恥ずかしくない顔で寝ていた自信は、まるでない。

「それに――。昨日、疲れさせたのは俺だから。ゆっくり寝かせてやりたかったんだ」

――。

こんな場所で、何食わぬ顔でそんなことを言う。そして、私は、一気に昨晩のことが蘇って一人頬が熱くなる。

「たくさん食べておけよ?」

そんな私に、相変わらずの爽やかな笑みを向けて来るのだ。

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