囚われのシンデレラーafter storyー

 それにしても。サンドイッチなんていうものまで、西園寺さんが食べると本当に所作が綺麗で優雅に見える。

 それに、適度に開いた黒シャツの胸元からちらりと見える鎖骨が、清潔感漂う西園寺さんにさりげない色気を醸し出して。手首を包む大きめな茶色の革の腕時計が、また男の人らしい。

カップを手にするその指は長くて骨ばって、あの指が私に――。

って、私は何を見ているんだ。何を考えているんだ――!

完全に、自分の視線と思考が不純になっている。おかしくなってしまったのかもしれない。

でも、言い訳させてほしい。

正面に西園寺さんが座っていると、平常心でいられなくなるのだ。
その姿を見ているだけで、なんとも言えない気持ちになってドキドキして。

無意識のうちにあらぬ方向に思考が行ってしまう……。

いや、言い訳している場合じゃない。このままではまずい。

完全に、煩悩にまみれた女になってしまう――。

「あずさ……?」

いつから私は、
こんな風になってしまったんだ――?

「あずさ、どうした?」
「え……?」

私を覗き込むように見ている視線に気づく。

「そんなに難しそうな顔をして。美味しくないのか?」
「え? あ、い、いえ。美味しいですよ。ホント、凄く美味しい。カフェオレも、さすが本場ですね。全然違う」

慌てて笑顔を作る。
あなたの恋人は、あなたをいかがわしい目で見ています――なんて、おくびにも出さずに笑う。


 カフェで食事を終えて、最初に来た場所は、観光名所ではなかった。

「一週間押さえておいた。ここなら、毎日アパルトマンから通うのにも安全な場所だから、俺が仕事の時でも一人で行き来できるだろう」
「こんなに立派な場所を探してくださって、ありがとうございます」

アパルトマンからも近い場所にあるビルの一室。
完全防音でありながら大きな窓もあるから、閉塞感はまったくない。
私のために西園寺さんが準備してくれた、音楽専用スタジオだった。

「バイオリニストを恋人にしているんだ。当然のことだ」

私の頭にぽんと手のひらを置いて微笑む。

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