囚われのシンデレラーafter storyー
クルーズを終えると、セーヌ川沿いのベンチで一休みすることにした。川沿いの遊歩道にはいくつもベンチが設置されていて、皆が思い思いに過ごしている。
屋台でクレープを買った。
「美味しいですね。この景色を前に甘いもの……うーっ、最高」
生クリームがたっぷりで、気分が上がる。
西園寺さんは甘いものが苦手なので、卵焼きとベーコンが挟まれているものを選んでいた。
「あ、そうだ。パリに来たからにはマカロンも食べなくちゃいけませんよね。あの見た目は、反則だと思うんです」
「……ふっ」
隣に座る西園寺さんから、声が漏れる。
「え?」
「いや……そういうところは、全然変わらないなって思ってさ」
あ――。
呆れられてる……?
「恥ずかしながら、根本は成長してないんですよ。アハハ」
ここは、笑って誤魔化すしかない。
「いや……、可愛いって意味」
長い指が私の頬を掠める。
「か、可愛いって歳でもありませんから」
あはは――。
その視線も仕草も生クリームより甘くて、またも笑って誤魔化すしかない。
「そう言われても、俺の中で、あずさには年齢の概念がない。可愛いものは可愛いんだから仕方ない」
「――」
今度は、俯いて黙るしかない。
西園寺さんのそばにいると、自分の年齢を忘れてしまいそうになる。
アルコールが入っているわけでも、夜でもない。
言葉も態度も、出し惜しみなく大サービスし過ぎです――。
「照れてるのか?」
「30過ぎた女で、"可愛い"と言われて照れずに済む人がいるでしょうか……」
「照れてるんだな?」
何の念押し?
「そういうところが、可愛いんだろ?」
「もう、分かりましたから! そんなに何度も言わないで」
熱い。一人、熱くなってくる。
これもまた、きっと、西園寺さんの"意地悪"の一種だ。
もう、黙々とクレープを食べることに専念する。
食べ終えた頃、ふと楽器の音が耳に届いて来た。