囚われのシンデレラーafter storyー
「あ……チェロの音」
「この辺り、外で演奏している人が結構いるんだ」
その音の方に視線を向ける。
ゆったりと流れる、『白鳥』のメロディーの低い音が心地よく響く。
そんな私の視線に気付いたのか、チェロを弾いている男の人が、演奏を続けたままこちらに何かを言っている。
「私に言ってるのかな」
「ああ……。一緒に弾かないかと言ってるみたいだな」
私のそばにあるバイオリンケースに気が付いたのだろうか。
しまいには、手招きをして来た。
「……せっかくバイオリンがあるし、弾いて来ようかな」
「え……っ? 無理しなくていいんだぞ? しつこいようなら場所を変えてもいい――」
「ううん。楽しそうだし」
あの人、なかなかの腕前だ。
音楽をやっている学生かもしれない。弦楽器をやっていると、自然と合わせたくなるものだ。自分がそうだからよく分かる。
「ちょっと行って来ます。西園寺さんも、聴いていて」
「お、おい――っ」
素早くケースからバイオリンを出した。
チェロ弾きの青年――見たところ二十歳前後だろうか。
とりあえず、単純な英語で話しかけてみるも、あっさりフランス語らしき言語で返された。
「――あずさ、この人は『派手なのを演奏したい。リベルタンゴは弾けるか』と、聞いてる」
「西園寺さん……?」
気が気じゃなかったのか、西園寺さんも付いて来てくれたみたいだ。
リベルタンゴーー難しい曲を告げて来た。でも、確かにストリート向きの曲だろう。勢いや盛り上がりに関しては抜群だ。
「……久しぶりだけど、多分、大丈夫」
大きく頷いてバイオリンを構える。
青年が、まだ西園寺さんに何かを言っていた。
「――主旋律は、交互にしてくれと。最初はバイオリン、次がチェロ、ラストはユニゾンで。そう言っている」
「なるほど……。オーケー!」
即興で出来るかな――。
いろいろ不安はあるけど、まあ、何とかなるだろう。
西園寺さんが心配そうにしつつも、見守っている。
青年と目を見合わせカウントを取る。チェロが、リズム感たっぷりに前奏を奏で始めた。