囚われのシンデレラーafter storyー
このリズムとメロディー。
かっこよくて、いつ聴いても惚れ惚れする。
お洒落で情熱的で、少し官能的。
チェロが刻むリズムに身体を預け、メロディーを弾き始める。
青年が目を見開いて私を見て、そして笑顔になった。
その音が乗って来るのが分かる。
一人で弾くのとは違う、複数で合わせることによる化学反応が楽しいのだ。
この曲の持つ疾走感を、身体全体で表す。
私が主旋律を弾いた後に、バトンのようにチェロにその旋律を引き渡す。そして、最後、ラストに向かって駆け上がって行く旋律を息を合わせて弾き上げた。
夢中になって弾き終えると、いつの間に集まっていたのか、たくさんのギャラリーに囲まれていた。
「ブラボー!」
あちこちから上がる声と大きな拍手に驚いて、慌ててお辞儀をする。
西園寺さんの姿を探すと、さっきとは違って、満面の笑みで拍手をしてくれていた。
「ユーアーアメイジング!」
チェロの青年が、興奮気味に私に英語で賛辞をくれた。私も青年に拙い英語で言葉を返すと、私の手を握りしめぶんぶんと激しく上下させて来る。
そこにやって来た西園寺さんに気付き、青年はようやく手を離してくれた。
チェロ青年と別れ、ベンチでバイオリンをしまっていると、ギャラリーの中にいた人なのか、熱心に私に何かを言って来た。
「――『あなたの演奏は素晴らしい。絶対に成功するから頑張って』そう言っているよ」
隣にいた西園寺さんが通訳をして、笑っている。
「ありがとうって伝えてください。頑張りますって」
私も笑顔で何度も頭を下げた。
その人が立ち去ると、西園寺さんがしみじみと私を見つめた。
「本当に、あずさはかっこいいな。あっという間に人を惹きつける。これからあずさは、こうやって、たくさんの人を惹きつけて行くんだろう」
「演奏、良かったですか?」
西園寺さんも、楽しんでくれたなら嬉しい。
その顔が私の目線に降りて来て。
そして唇が耳元に近づく。
「……また、惚れた」
ふっと顔が離れると、西園寺さんが溜息を吐いた。
「これ以上ないってくらい好きだと思っていたのにな。この先の自分が怖くなるよ」
西園寺さん――。
「……さあ、エッフェル塔に向かおうか」
西園寺さんが、バイオリンケースを手にした。