囚われのシンデレラーafter storyー
どちらともなく手を繋ぎ、遊歩道を歩く。
「……俺の恋人は、俺をドキドキさせるのが得意らしい」
「え?」
ぽつりと呟く西園寺さんを見上げた。
「一緒にいると、いろんなあずさの顔を見られるってことだよ。それより、あの男。あずさに触り過ぎだ」
「触るって……。あの、握手のこと?」
「まったく、心配の種ばかりで困るよ」
そう言って、いたずらっぽく笑う。
その日は、エッフェル塔を観光して、凱旋門まで足を伸ばした。凱旋門では展望台に上り、放射線状に広がるパリの街並みを一望した。
「壮観ですね……。本当に街を見下ろせる」
歴史的建造物の数々が、隙間なくきっちりと並ぶ。
「パリは、建物の高さが規制されているからな。この高さからでも、すべてを見下ろせるんだ。特別な景観を守っている」
そう言われてみれば、屋根の位置が揃っている。上空から見ても美しい街だ。
「西園寺さんは、こんなに素敵なところで暮らしているんですね」
「まあ、良い面ばかりではないけどな。でも、パリを選んで良かったと思っているよ」
風が吹き抜けて、西園寺さんがさりげなく私の背中に手を回した。
「確か、パリのホテルから声を掛けてもらったから、ここで働いているんですよね?」
そう聞いたのを覚えている。
「俺に声をかけてくれたホテルは、外資で世界的に展開しているんだけど。本当は、ニューヨークとパリ、勤務地の選択肢は二つあった」
「そうだったんですか」
向き合い西園寺さんを見上げた。
「考える前に、パリに行くと答えていた。無意識のうちに、少しでもあずさの近くにいたいと思ったんだろうな」
「西園寺さん……」
思わずその腕を掴んでいた。
「ニューヨークじゃなくて良かったです。会いに行くのが大変になるところだった」
「そうだな」
そっとその胸に頭を傾けると、西園寺さんが優しく背中を抱き寄せてくれた。
季節的に日没時刻は遅い。そのせいで、ついつい時間を忘れてしまう。アパルトマンに帰宅した時には夜の10時を過ぎていた。