囚われのシンデレラーafter storyー
次の日の観光に備え、早々にお風呂に入り、二人してベッドに潜り込んだ。
「今日は、本当に楽しかったです」
「かなり歩いたな。疲れただろう」
ベッドの中で顔を寄せ合う。
一緒に目覚めて、一緒に眠りにつく――。
心が穏やかに満たされて行く。
「疲れましたけど……でも心地いい疲れです。楽しいことしての疲れなんて、どうってことないでしょ?」
「そうだな。本当に、今日はいろいろあって楽しかった」
大好きな大きな手のひらが私の髪を梳くように撫でる。
「美味しそうに甘いものを頬張ったかと思えば、人が変わったみたいにバイオリンを弾いて……ああ、そうだ。そう言えば、展望台に上ってはしゃいでたな」
西園寺さんが柔らかく微笑む。
「高いところって興奮しませんか? なんだか、全部この手中に収めた気になりません?」
その目に包み込むみたいに見つめられれば、甘えたい気持ちが自然と込み上げて。冗談ぽくそんなことを言ってみたら、西園寺さんが声を上げて笑った。
「そんなこと、思っていたのか?」
「この手の中にすべてがあったら、爽快じゃないですか」
部屋の明かりを消したから、窓から薄く入る月の明かりだけが私たちを照らす。静かな部屋で潜めた声は吐息をも孕むから、その存在を近く感じる。だから、その目の変化に気付く。
西園寺さんが突然身体を起こし、私を見下ろすように顔の横に手を付いた。
「他のものはどうでもいいけど、一人、俺の言うことをきいてくれない人がいて困ってる。全然、俺の手中に収まってくれないんだ」
「え? 誰?」
目を瞬かせて西園寺さんを見上げる。
「……昨日お願いしたにも関わらず、結局、今日一度も名前で呼んでくれなかった誰かさんだ」
「あ……っ」
口に手のひらを当てる。
私、今日……。
間違いなく、”西園寺さん”としか呼んでいない。