囚われのシンデレラーafter storyー
翌朝は、私たちの忍耐のおかげで、予定通り早起きすることが出来た。
「今日は、美術館を巡って、パッシー墓地にも行こう。それから、オペラ座にも行って――」
二人でパンをかじりながら急いで支度をする。
「とにかく、行く場所がたくさんある」
「とにかくまずはスタジオですね?」
「そうだ。しっかり練習するように」
西園寺さんが、子どもにするみたいに頭をポンポンと叩いた。
服を着替え途中の西園寺さんは、その白いシャツのボタンがまだ一つも閉じていなくて。
見てはいけないと視線を慌てて逸らすけれど、見てしまった――!
西園寺さんに背を向けてキッチンに立つけれど、しっかり脳にその残像が残っている。
割れた腹筋が――。
また、煩悩が顔を出す。
数か月一緒に暮らしていたのに、そういう西園寺さんの姿を見たことなんてなかったのだ。あのマンションで一緒に暮らしていながら、家の中で見る西園寺さんはいつも隙のない姿。お互いに空間を別にして生活していた。
むしろ離婚して、遠距離恋愛をしている今の方が、一緒に暮らしている距離感を感じられている。
「――あずさ。片付けなら俺がやるから、早く支度しろ」
「わ……っ」
不意に背後に立つ西園寺さんに慌てる。
「あ、は、はい。すみません。そうします」
とにかく私は練習だ。
朝からスタジオに向かい、集中して練習をする。
何よりその密度が大切だ。自分でも驚くほどの集中力を発揮した。