囚われのシンデレラーafter storyー
ルーブル美術館にオルセー美術館。あまりに広くてすべてを見ることはできなかったけれど、西園寺さんの案内でポイントを押さえることは出来た。
こうして一緒に観光をして気付いたことがある。
西園寺さんは、とにかく博学だ。話をしているだけで、知らないことを知ることができる。
そう告げたら、
『俺も、あずさといると自分の知らない世界を教えてもらえる。俺とは違う感性にいろんなことを気付かされる』
と言ってくれた。
観光の合間に、公園の芝生に座り昼食を取った。
パリは都市でありながら、かなり公園がある。こうやって休憩するには事欠かない。
緑あふれた公園の木陰で肩を並べて座る。
こうやって、気負うことなく過ごす時間が尊い。
それからパッシー墓地へと向かった。
どこを歩いても、どれだけ観光客がいても、誰も西園寺さんを知らない。誰の視線を気にすることもない。私たちは、私たちだけを見ていられる。
パッシー墓地で、ドビュッシーとフォーレのお墓を訪れた。
「――もうこんな時間か」
「この後はどこに行くんですか? 少し休憩します?」
腕時計に目をやる西園寺さんに声を掛ける。
「いや――。シャンゼリゼ通りに行こう。買いたい物がある」
「はい。お付き合いします」
手を引かれて連れて来られたところは、いかにも高級そうなブティックだった。
「買い物って、西園寺さんのものじゃなかったの?」
「一日くらいはちょっといいレストランで食事をしようと思って予約してあるんだ。そこがドレスコードがあるから。ここであずさの服を選んでからレストランに出かけよう」
私の今の服装は、ジーンズにネイビーのポロシャツと、足元はスニーカーだ。
「でも――」
「大丈夫。俺にプレゼントさせてくれ」
そう言うと、西園寺さんは早速店員さんに何かを伝えている。
「そんなの、申し訳ないです」
夫婦でもない。
それに、そう簡単に買ってもらうわけにもいかない。
私は既に、『慰謝料』という名の西園寺さんの援助を受けている。
それに――。
西園寺さんは、以前の西園寺さんとは違うはずだ。
この街で普通に働いている人。店内を少し見渡しても、到底、大量生産の服を売っているような店じゃない。
「あずさのためじゃない」
引き留めようとする私に、西園寺さんがきっぱりと言った。
「いつものあずさも可愛いけど、ドレスアップしたあずさも見たいっていう俺の我儘だから。今日の夕食は、俺の我儘に付き合ってくれ」
その言葉に、もう何も言えなくなった。