囚われのシンデレラーafter storyー
結局、そのお店で、ドレスと靴を買ってもらった。それを持ち帰り、今、アパルトマンに戻ってきている。西園寺さんの寝室を借りて、身支度を整えているところだ。
姿見に、自分の姿を映す。
このドレス、本当に素敵――。
どういうデザインのものがいいかと店員さんに聞かれて、私は、西園寺さんに任せると言ったのだ。
こうなったら、とことん西園寺さんを喜ばせよう。
そう思ったら、少し気が楽になった。
ドレスを選んでもらった後、ドレスを着た姿を西園寺さんには見せていない。試着室でサイズを確認してそのまま購入した。
それも、西園寺さんに、ヘアスタイルもメイクも、完成した姿で見てもらうためだ。どうせなら驚かせたいと思うのが女心。
胸元がVラインになっているデザインの黒いシックなドレス。腰のところがシェイプされて、そこから膝までが完全に隠れるセミロングの丈が、大人の女性に見せてくれる。シンプルなデザインなのに、布の張り感がゴージャスでそれだけで華やかだ。
鏡の前で、いつもより念入りにメイクをした。黒いドレスに合わせ、少し濃いめの赤い口紅を引く。髪はアップにしてまとめた。
せっかくの素敵なデザインのドレスだ。それを見せる方がいい。そのせいで、背中も少し露わになるのが心許ないが、それがこのドレスの大人っぽさでもある。
エナメルの黒いハイヒールに足を入れた。身支度の完成した自分の姿を改めて見る。自分が少し格上げされた気分になった。自然と背がピンと伸びる。
演奏で舞台に上がる時以外、着飾ることなんてほとんどない。
メイクや衣装が、自分の気分を変えてくれる。本番のドレスと同じことなのだ。この気持ちを楽しむことが、お洒落をすることの本当の意味なのかもしれない。
「――お待たせしました」
寝室から出てリビングダイニングへと向かう。
「いや、大丈夫だよ――」
ソファに座って新聞を読んでいた西園寺さんが、私へと目を向ける。
「……どう、ですか?」
恐る恐る、西園寺さんの前に出た。