囚われのシンデレラーafter storyー
「――それと、公香さんのことも知らせておくべきだな。あずさにも辛い思いをさせてしまったから」
自殺未遂をした、西園寺さんの元婚約者。
一命をとりとめたことまでは知っているけれど、その後どうなったのかはもちろん知らない。
「今では元気になっているそうだ。自分の父親が罪に問われたことで、逆に、目が覚めたんだろう。自分の足で歩かなければと思えたのかもしれないな。遥人からの情報だけれど、図書館で働いているらしい」
「本当に良かった……」
一度しか会ったことがないけれど、あの人のことは鮮明に覚えている。
「漆原も執行猶予の身だ。西園寺家も漆原も失ったものは多い。俺が告発したことで、漆原の闇も世に晒されることになった。まあ、当初は俺もそれなりに恨まれたが――」
そこで、西園寺さんが言葉を濁した。
きっと私には言葉に出来ないような目に遭ったのだろう。
でも今、ここにこうしていてくれている――。
「斎藤さんが、西園寺さんを守ってくれたんですね?」
「……え?」
西園寺さんが驚いたように私を見る。
「私がモスクワに立つ前に、斎藤さんが謝まりに来てくれたんです。何があっても西園寺さんを守るって、私に約束してくれました」
「……そうだったのか」
斎藤さんは、私との約束を果たしてくれた。
私と同じように西園寺さんを愛している人だ。
「漆原も好き放題出来なくなった。それに何より、自分の娘が前を向けたことが大きいのだろう。今の西園寺には何のメリットもないしな。もう、完全に無関係だ」
その言葉に、心底ホッとする。
もう、西園寺さんの身を案ずる必要がないということだ。
私が安心していると、その表情を緩めて私を見つめた。
「――それにしても。あずさをそこまで心配させてしまうなんて、やっぱり俺はただのボンクラ御曹司とでも思われていたのかな?」
「え……?」
その目が、意地悪なものに変わる。
「市場価値はそこそこある男だと思っているけど?」
「そんなこと、分かってます! そういう意味じゃないんです!」
「ごめん、ごめん。分かってる」
必死に弁解する私に、西園寺さんが口元を緩めた。
「でも。ありがとう。俺がいつ首を切られてもいいように、あずさも頑張ってくれ」
「任せてください。万が一の時は、私が西園寺さんを養えるように頑張ります」
「それは、頼もしい。頼んだぞ」
「あ、でも……贅沢は無理だと思うけど。普通に暮らすくらいは……」
「急に弱気になったな」
「だって、普通の音楽家は、結構、生活苦しいんですよ……」
「なんだよ。普通でいいのか? 俺としては、ぜひとも世界的バイオリニストになってほしいけどな。世界ツアーとかしてしまうような」
「そ、そんな。プレッシャーをかけないで!」
その表情をくしゃっとさせて。西園寺さんは、完全にわざと私を困らせている。
「嘘だよ。俺は、あずさがあずさの思うように演奏できるバイオリニストになってくれればそれが一番いいと思ってる」
楽しい時間はあっという間だ。
美味しい食事とワインで、夜は更けて行く。