囚われのシンデレラーafter storyー
食事を終えレストランを出ると、帰りのタクシーが既に停車していた。
その車に乗り込むと、すぐに闇に覆われた森を走り抜けていく。夢のような空間に別れを告げるように、次第に街の明かりが見えて来た。
「本当に、今日はありがとうございました。すごく、楽しくて、素敵な夜でした」
後部座席で隣に座る西園寺さんに、少し身体を向けた。
「今日は、まだ終わりじゃないだろ?」
座席シートに置いた手のひらに、その手が重ねられる。
「出かける時から、俺がどれだけ耐えているか分かるか?」
「出かける時……?」
夜の車内は薄暗い。
少しずつ、道路を走る車のテールランプが増えて来ても、それが横切る程度。密室で囁かれる低い声と、私に向けられる熱の孕んだ目に、どきりとさせられる。
「そうだ。目の前にずっとセクシーで綺麗なあずさがいるんだぞ」
重なった手のひらの、指と指の間に、西園寺さんの指が絡んで行く。
私の身体の奥までも刺激するようなその触れ方に、体温が上がる。
「でも、この後のことを期待しているのは、俺だけじゃないよな?」
「西園寺さん……っ」
握りしめられた手を引き寄せられる。
前には運転手さんがいるのに――。
手と同時に腰も掴まれて、私の耳に西園寺さんの唇が近づく。
「――今ので、何度目だと思っているんだ?」
「な、何が、ですか――」
きつく抱きしめられているわけでもない。
手を握られて腰を引き寄せられれば、この身体はもう反応してしまう。
「とっくに3回を超えてるぞ」
3回――。
名前を呼ぶ、こと?
その単語で、西園寺さんの言葉の意味することを理解する。
「嘘……っ。私、今日は、ちゃんと――」
「嘘じゃない。自分で、気付いていないのか……?」
"佳孝さん"と呼ぼうと、意識していたつもりだ。
会話に夢中になっていた時だろうか――?
「俺は、あずさはお仕置きされたいんだと理解していたよ」
「違います! 気付いてたなら、教えてください――」
潜めた声が、私を追い詰めて。
逃れようとしても、その手がしっかりと腰を掴んでいる。
「……そんな馬鹿なことをするはずがないだろ?」
意地悪く囁く声を残すと、その身体は離れて行った。
それなのに、耳に残る余韻と絡められたままの指のせいで鼓動が激しくなる。