囚われのシンデレラーafter storyー


 西園寺さんが出掛けた後、バスタブにお湯を張って入浴した。
 ところどころに残る赤い跡に、一人恥ずかしくなる。

 ゆったりとバスルームで過ごしてから着替えをして、寝室に戻った。

あ……ドレス――。

黒いドレスがきちんとハンガーに掛けられていた。

西園寺さんがしてくれたんだ――。

何から何まで、お世話になりっぱなしだ。
せめて、ここにいる間は、何か西園寺さんに返したい。


 ベッドのシーツを引きはがし洗濯機に入れて、そして、ダイニングへと向かった。

 改めて見回すと、本当にすっきりとしている。それは、殺風景とも言えた。
 備え付けの家具以外の、無駄なものは何もない。何か置かれている物と言えば、本くらいか。難しそうな専門書や、いくつもの経済誌が積み上がっていた。
 間違っても、着ていたものや食べたものが散らかっていることはない。

 以前から感じていた。西園寺さんの、本当の育ちの良さ。裕福で恵まれた環境で育ちながら、きっとご両親から厳しくきちんと育てられたんだろう。

なのに、どうして――。

そう思うと、胸が痛くなる。
西園寺さんの身に起きたことを考えると、やるせない感情が込み上げる。

手に入れたい物は何でも手に入れられたであろう頃から、自分にはとてもストイックで。

そんな人だったから、子どもの頃からそばにいた斎藤さんは、西園寺さんに惹かれてしまったんだろう。

そこで、不意に斎藤さんの顔が浮かんだ。男性なのに、とても綺麗な人だった。

そりゃあ、西園寺さんの近くで一緒に過ごしていたら、好きにならずにはいられないよね――。

過去の苦しかった日々を少し思い出し、喉元に苦みを感じた。

 とりあえず、部屋の窓という窓を開ける。小さく視界に入るエッフェル塔が、この部屋の立派なインテリアだ。

 ここに来てからの三日間があまりに慌ただしくて、モスクワから持って来たお土産も出していなかったことに気付く。
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