囚われのシンデレラーafter storyー
買い物を済ませて部屋に戻った時には、19時半を過ぎていた。
この日は、帰宅してから作るには時間的に遅くなってしまったので、デリでお惣菜を買って来た。
「明日から、しっかり作りますから」
「無理はしなくていいからな」
二人、キッチンで、食事の準備をする。
西園寺さんはワインを。私は、お惣菜を皿に盛り付ける。
少しずつ暗くなっていく空とエッフェル塔を眺めながら、テーブルについた。
「いただきます」
部屋での食事も、また楽しい。二人だけで過ごせる空間だ。
「一日、なんとか過ごせそうか?」
「はい。散策してみたいところもあるし、練習もありますから」
「そうか。俺も、なるべく早く帰るようにするよ」
こうして他愛のない時間を過ごせるのも、あと数日――。
でも、その事実と向き合うのは、今はやめておく。
「あずさ!」
「はい?」
キッチンで洗い物をしていると、西園寺さんが私を呼ぶ声がした。
「これ、あずさが?」
駆け寄ってみると、昼のうちに飾っておいたモスクワ土産を指差していた。
「はい。お土産、何がいいかと探していて、ちょっと子どもじみてるかなとも思ったんだけど、なんだか可愛いので買ってしまいました」
「マトリョーシカだよな。この部屋の雰囲気が一気に変わった気がする。ありがとう」
大きな人形の中に7体入っていたものを、大きい順にソファ近くの窓辺に並べたのだ。
どれも、どことなくとぼけた雰囲気で、つい笑ってしまう。それで、手に取ってしまったのだ。
「マトリョーシカには、言い伝えがあるのを知ってるか?」
「いえ。どんな言い伝えですか?」
「一番小さい人形に、願いを込めて息を吹きかけてからこの人形を中に入れて元に戻すと、その願いが叶うというものだ」
モスクワに住んでいながら、知らなかった。
「そんな言い伝えがあったんですね? じゃあ、せっかくだから何かお願いしないと」
そう言うと、西園寺さんが笑った。
「そうだな。でも、そう何度も願いをきいてくれるわけじゃないだろうから、ここぞという時のために取っておこう」
「そっか……そうですね。どうしても叶えたいことが出て来た時のために、今はこうしてみんなを並べておきましょう」
肩を並べて、二人で眺める。