囚われのシンデレラーafter storyー
「本当に? こんな至近距離で?」
「た、たまたまです。腕が滑って――」
「そんな下手な嘘をつくくらいなら、正直に言った方がいいな」
「きゃっ……っ」
いきなり視界が反転した。
「こんな風に――」
形勢が逆転して、今、西園寺さんに見下ろされている。腕を強く押さえつけられて、その顔が近付いて来る。
次の瞬間には唇が重ねられていた。
「キスしようとしていたんだろ?」
「言いがかりです」
「嘘をつき続けるなら、もっとする。これ以上のこともする」
「今、朝です。仕事、遅れますよ?」
「そうだな。遅刻は社会人失格だ。ましてや、朝から恋人と抱き合っていたので遅れましたなんて言おうものならクビになるな。それでいいのか?」
絶対、そんなこと言わないくせに――。
意地悪く光るその目を、恨めしく睨みつける。
「そんな風に、可愛く睨んだところで無駄だぞ? そうか、分かった。あずさが望むなら仕方ない。その願いを叶えてやろう」
「え……えっ?」
その手が服の中に入り込んで来る。そして、下着を着けていない胸にすぐにたどり着いた。
「ま、待って、本当にするつもりですか?」
「俺は本気だよ」
その手が腰をさすり、胸を包み、這いまわる。
「ダメ、です! 本当に、ダメ!」
「――」
私の声を無視して、唇を胸元に落として来る。
「分かりました。分かりましたから。佳孝さんの寝顔を見ていたら、キスしたくなって。キスしようとしました……っ!」
自棄っぱちのようにそう叫ぶと、ようやくその手が止まってくれた。
「――本当に、どうしてあずさはそんなに可愛いんだ」
顔をくしゃくしゃにして笑う西園寺さんを、一人恥ずかしくなって見つめる。
「この年になって、初めて知った。好きな子ほど苛めたくなるという心理。子供の頃、好きなのにわざとからかったり意地悪したりする同級生の男を見ても全然理解できなかった。でも、今なら分かるよ。よく分かる」
そんな風に笑って、私を見つめて。
「でも、あずさも悪い。苛めると反応が可愛くて、もっと苛めたくなる。そうしたら、もっと可愛い反応が返って来る。もう、無限ループだ」
「な、何言ってるの?」
今度は、私をとことん照れさせて顔を真っ赤にさせて焼き尽くすつもりだろうか。
「もう、自分でもよく分からない」
そう言って私をぎゅっと抱きしめて来た。
朝の眩い太陽は、きっと私たちに呆れているだろう。