囚われのシンデレラーafter storyー

(有紗も新しい恋見つければ? パリの男って、なんだかセクシーな感じじゃない? 有紗の美貌なら、気に入った男を手に入れるなんて訳ないことでしょう?)

パリの男――。
周囲はパリの男だらけだと言うのに。

(あ、でも、その前にいい男がいたね)

とびきりいいことでも思いついたかのように瑠璃が声を上げた。

(西園寺さん! 彼、独身でしょう? 以前のような高貴な御曹司という立場からも落ちているわけだし、家柄とか深く考えなくてもいけるんじゃない?)

さりげなく失礼なことを言っているけれど、瑠璃の言いたいことは分かる。

(異国の地で同じ日本人同士。上司と部下。いいじゃない。パリで恋愛するなんて、ロマンチック―! あの石畳を肩寄せ合って歩いたり? セーヌ川沿いで愛を語らう。あー素敵!)

勝手にスマホの向こうで盛り上がり出した。

(私、もうストーリーが浮かんじゃったんですけど。
異国の地で上司と部下という立場で出会い、仕事を通して少しずつ愛を育んでいくのよ。そして、部下である女は、上司の過去の傷を癒していくの。そして最後は公私ともに最高のパートナーになる……どう?)
「恋愛小説の読み過ぎ」
(現実が枯れてるんだから仕方ないじゃない。有紗には私の気持ちなんて分からない)

つい、溜息を吐いてしまう。

「あのね。現実の西園寺さんはロマンチックな雰囲気の欠片もないのよ。まるで氷。塩対応もいいとこ。そんな男、私は御免よ」

それは、自分に対する戒めだろうか。

(……じゃあ。彼の方から言い寄って来たら? 有紗はどうするの?)

あの人が私に――。

「それは……まあ、拒否はしないよね」
(ほら。それって、完全に、恋愛対象として見てるってことじゃない。結婚していない相手なら、いいじゃない。男と女だもの。何が起こるか分からない)

瑠璃は、その後も好き放題言って「仕事に行くから」と一方的に切った。

瑠璃のバカ――。

結局また枕に顔を埋める。

 慶一郎とは、2年くらい付き合った。
 
 付き合い始めた時の年齢を考えたら、結婚を考えてもいい相手だった。

 あんなにも私に情熱的に口説いて来て、付き合ってくれと懇願して来たくせに。その情熱も1年くらいで薄れて来た。
 あとは、ただの惰性。結婚のけの字も言い出さない慶一郎に何度か詰め寄ったけれど、彼から結婚の意思は感じられなかった。
そんな時に赴任の話があって。

『それなら仕方ないよな』

何、それ。

決して自分から別れを切り出さない。最後の最後、悪者にさえならない。どこまでも自分が可愛い。

でも、人ってそういうものだよね――?

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