囚われのシンデレラーafter storyー


――週明けの月曜日。

朝から無人だったガラス張りの経営企画部長室に、その主が戻って来たのは夕方を過ぎた頃だった。

西園寺さんは、国際会議を誘致する話で営業に同行していたのだ。

 いつも以上にかっちりと身を包むスーツ姿は、外に出向いていたからか。

 西園寺さんは、本当にスーツが似合うと思う。溜息が出るほどに惚れ惚れとする。隙のない姿をより隙のないものにしているスーツ姿は、防護服のようにも見えるけれど。

 夕方を過ぎれば、次々にスタッフたちは帰って行く。その中でも1、2を争うくらいに早くオフィスを後にしていた西園寺さんが、この日は部長室にいたままだった。

珍しいな――。

自分の席から見える部長室を見つめる。
パソコンに向かって仕事をしている。

溜まっている仕事でもあるのかもしれない。

そう思いながら、また自分の手元に視線を戻す。



そろそろ帰ろうかな――。

そう思ったのは、夜の8時を過ぎた頃。スタッフは全員帰宅した後だ。まだペースを掴めない私は、定時上がりなんて到底無理で。こうして誰もいないところで必死に穴埋めしないと翌日困る。

 不意に部長室に目をやった。

あれ。まだ、いるんだ――。

薄暗くなりつつあるオフィス。部長室のデスクのスタンドだけに明かりがついていた。他には誰もいない。

何か急ぎの仕事でもあるのだろうか――。

電源を落とそうとパソコンのボタンに置いた指を離す。もう一度、閉じたファイルを開いた。

私も、もう少し仕事をしていこう。
キーボードに手を置く。

 さすがに肩が凝って、思わず腕を天井に向かって伸ばした。壁に掛かる時計を見たら、9時を過ぎていた。

 西園寺さんはまだ部屋から出て来ていない。すぐに部長室に目をやった。今度は、パソコンに向かう姿ではなかった。頭まである椅子の背もたれは、窓の向こうに向けられていた。

休憩中――?

ここに来てから、西園寺さんの仕事をしていない姿を目にするのは初めてだった。

西園寺さんでも、景色を見ながら物思いにふけったりするんだ――。

コーヒーマシーンのところへと向かい、ブラックコーヒーを準備した。

< 90 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop