囚われのシンデレラーafter storyー
視線の先を見つめると、そこには集団が出来ていて、にわかに盛り上がっている。その中心にいたのが西園寺さんだった。
あんな風に西園寺さんが談笑しているのは珍しい。やはり、ここがお酒の場だからだ。
”――アリサ”
さっきの男をあしらったと思ったら――。
そう思って振り返ると、そこにいたのはアベルだった。
”飲んでるかい?”
”はい”
アベルは、一番言葉を交わす同僚だ。仕事でも関りがある。
ワイングラスを合わせた。
”西園寺さんたちは、何の話で盛り上がっているのかしら。彼がにこやかな姿を初めて見たから、びっくりして”
”ああ……”
アベルもちらりとそちらへと視線を向けて、私に微笑んだ。
”アリサもヨシタカのところに行ってみたらどう? 何を話題にしているか分かると思うよ?”
その勿体ぶった話し方に少し苛立って、前のめりになって問い掛けた。
”そんな意地悪しないで、教えてよ”
”ごめん、ごめん。あれは、ヨシタカの恋人の話だ”
”え――?”
思いもしなかった答えに固まる。
”西園寺さんが?”
”そうだよ。意外だろ? 君が来る前の話なんだけれど。一か月くらい前かな、あのヨシタカが、妙に浮ついている日があって。さすがにみんな聞かずにはいられなかった。しつこく『恋人でも出来たのかい?』なんて冗談で聞いてみたら、意外にも『そうだ』って返事が返ってきたんだよ。それでもうみんな大盛り上がりさ”
あの西園寺さんが―ー?
信じられない。
”その恋人って、どんな人なの……?”
”ヨシタカが『可愛くて、カッコいい人だ』って言ったんだよ。あの顔でそんなこと言うんだ。もう、デレデレでさ。そのギャップに驚いたよ。だからこそ、本当に大切な人なんだって伝わった”
アベルが思い出したように楽しげに話す。
”カッコいいって……同じクラウンの人なのかしら”
”そこはヨシタカだ。それ以上詳しいことは教えてくれなかった。でも、日本人らしいよ。カッコイイと表現するくらいだからね。仕事もバリバリする女性なんじゃないかな”
あの電話での日本語。アズサという名前――。