囚われのシンデレラーafter storyー


 視線の先を見つめると、そこには集団が出来ていて、にわかに盛り上がっている。その中心にいたのが西園寺さんだった。

あんな風に西園寺さんが談笑しているのは珍しい。やはり、ここがお酒の場だからだ。

”――アリサ”

さっきの男をあしらったと思ったら――。

そう思って振り返ると、そこにいたのはアベルだった。

”飲んでるかい?”
”はい”

アベルは、一番言葉を交わす同僚だ。仕事でも関りがある。
ワイングラスを合わせた。

”西園寺さんたちは、何の話で盛り上がっているのかしら。彼がにこやかな姿を初めて見たから、びっくりして”
”ああ……”

アベルもちらりとそちらへと視線を向けて、私に微笑んだ。

”アリサもヨシタカのところに行ってみたらどう? 何を話題にしているか分かると思うよ?”

その勿体ぶった話し方に少し苛立って、前のめりになって問い掛けた。

”そんな意地悪しないで、教えてよ”
”ごめん、ごめん。あれは、ヨシタカの恋人の話だ”
”え――?”

思いもしなかった答えに固まる。

”西園寺さんが?”
”そうだよ。意外だろ? 君が来る前の話なんだけれど。一か月くらい前かな、あのヨシタカが、妙に浮ついている日があって。さすがにみんな聞かずにはいられなかった。しつこく『恋人でも出来たのかい?』なんて冗談で聞いてみたら、意外にも『そうだ』って返事が返ってきたんだよ。それでもうみんな大盛り上がりさ”

あの西園寺さんが―ー?

信じられない。

”その恋人って、どんな人なの……?”
”ヨシタカが『可愛くて、カッコいい人だ』って言ったんだよ。あの顔でそんなこと言うんだ。もう、デレデレでさ。そのギャップに驚いたよ。だからこそ、本当に大切な人なんだって伝わった”

アベルが思い出したように楽しげに話す。

”カッコいいって……同じクラウンの人なのかしら”
”そこはヨシタカだ。それ以上詳しいことは教えてくれなかった。でも、日本人らしいよ。カッコイイと表現するくらいだからね。仕事もバリバリする女性なんじゃないかな”

あの電話での日本語。アズサという名前――。

< 96 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop