囚われのシンデレラーafter storyー

”仕事中のヨシタカはガードが堅いからね。こういう機会に、みんなデレデレのヨシタカが見たくて、ああやって根掘り葉掘り聞いているんだ”
”そう……”

そのグループにもう一度目をやると、あの西園寺さんが困った表情をしていた。

いつもは眉さえ動かさない表情を柔らかくしているのは、彼女の話をしているから――?

『俺だって、アズサの声を聞きたい』

あの電話の声もそうだった。

”今日は、ヨシタカも覚悟しないとな。先週、彼が忙しいと言っただろう? その理由がまさに恋人。パリに一週間ほど来ていたらしいんだ。その話でもみんなで聞いているんじゃないかな”

なるほどね……。

日本人の恋人と遠距離恋愛中――。

あのキスマークは、まさにその恋人がパリ(ここ)に来ていたから。

でも、私にとって大事なのは”遠距離恋愛”だということだ。

その人をどんなに愛していたって。大切にしていたって。

そこには、物理的距離が大きく立ちはだかる。
それも、日本とパリだ。会いたい時にすぐに会える距離ではない。

それが、恋愛においてどれだけ困難な障壁になるか。

ましてや恋愛が始まってたったの一か月。
分かるはずもない。
その距離の大きさを実感するのはこれからだ。

距離は確実に心も離していく。
私はそれを、嫌というほど知っている。

日本にいるアズサより、西園寺さんの近くにいて毎日顔を合せるのは、私だ。

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