囚われのシンデレラーafter storyー
私にはたっぷり時間がある。だからこそ、慎重に動くべきだ。
西園寺さんのような男は、積極的に来る女は敬遠する。女に迫られることが多い分、その意図を知った途端うんざりするだろう。
『可愛くて、カッコいい人だ』
予想通りだ。
仕事ができる女が好き――。
気付けばいつもそばにいて、西園寺さんが自ら私に女を感じるようになるまで、まずは仕事で信頼を得ること。
男と女だから。そのあとは、勝手に事は進んで行く。
距離には抗えない。
社会人になって初めて付き合った人は、年上の男だった。
年下の私を溺愛したけれど、彼が海外赴任して1年が経った頃、現地の日本人と浮気した。
『有紗のことは愛していたよ。でも、いつも近くにいてくれる彼女に癒しを求めてしまった。寂しかったんだ』
寂しいと、心は弱くなって。近くにあるものでその寂しさを埋めようとする。
そして、黒川慶一郎。今度は、私は逆の立場になった。
彼は、大阪クラウンから東京に赴任して来た。出会ったばかりの時、彼には大阪に残して来た恋人がいた。それなのに、彼は私に惹かれてしまった。
『どうしようもなく、君が欲しい』
何度も何度も口説かれた。
恋人はどうするのかと聞いたら、『目の前の有紗しかもう考えられない』と言った。
慶一郎は、すべてにおいてバランスの取れた男で付き合うのに申し分はなかった。
だから私も彼を受け入れた。
結果としては奪う形になってしまったが、私が悪いわけじゃない。
男に一途さなんて求める方が間違っている。何があっても一人の女を愛して、間違いすら起こさない男がいるのだとしたら、それはファンタジーの世界だ。もしくは、誰にも相手にされない冴えない男か。
二人とも仕事のできる男だったけれど、デキる男ほどエネルギッシュなものだ。一人の女で満足するはずがない。
西園寺さんも、一人の男だ。キスマークを付けられるほどの行為をしているのなら、その欲を常に抱えていなければならない。
人間生きていれば、弱る日もある。心に隙間風が吹く時もある。やりきれない夜もある。必ず、人肌寂しくなる夜がある。
それでも、近くに彼女はいない。
じっと、辛抱強く待っていれば、必ずそういう夜が来る――。
私に必要なのは、その時を逃さないことだ。その時が来るまで、私は、ただひたすらに誠実に仕事をして西園寺さんのそばにいる。
誰かを手に入れるために、こんなに労力を割こうと思ったことはない。そんな面倒なことをしなくても、男は私の元へやって来た。
でも――。
どれだけ苦労しても、面倒なことをしても、辛抱しても、時間を費やしても。
どうしても、西園寺佳孝を手に入れたい。
だって。
それだけのことをする価値のある男だから。
他人に羨ましいと言われた過去に付き合った男たちも、西園寺さんを前にしたら皆霞んでしまう。
これまでもこの先も。
こんなに極上の男はもう現れない。
そう思うでしょう――?
"アベル、私、西園寺さんに挨拶に行って来る"
"ああ、それがいい"
何をしてでも手に入れる。
新しいワイングラスを手にして、そのグループの元へと向かった。