春の欠片が雪に降る
送り出し、木下が加わったコートをぼんやり眺めていると「あのぁ……」と、控えめな声。
「はい?」
見れば木下と同年代くらいだろう女の子が二人。
ほのりの隣にしゃがみ込んだ。
「木下の彼女さんなんですか?」
「ち、違うよ、職場が一緒なんです」
手を左右に振って大袈裟に否定したほのりを見て、二人はあからさまに嬉しそうな顔をした。
「あ、上司の方なんですね、よかった!」
「うーん、上司ってわけでもないんだけど」
(言ってるそばからきたなぁ……)
これは明らかに。
「ほら、だから言ったじゃん。お姉さんとか職場の人じゃない? って」
「でも木下ってお姉さんいないじゃん、だからびっくりした」
(木下くんのこと好きな女の子だな……)
ほのりは、何となく直視したくなくて木下のいるコートに視線を向けた。
「木下が女の人ここに連れてくるって初めてだから、この子驚いちゃって」
肩をポンっと叩かれた女の子は、見るからにスポーツをしにきた服装ではない。ベージュのニットに、合わせているのはロングのタイトスカートだ。
ふわふわと柔らかそうな肩下まである髪の毛を緩く巻いて、細くて小さくて、可愛らしい。
「だってフリーなの初めてじゃん……、ごめんなさい、いきなり」
顔を赤らめて、謝罪されてしまったなら並の男は大体キュンとくるだろう。女だが、ほのりも少しキュンときた。
「いいですよ。木下くんが好きなんだ?」
上司だと思われていたならばそれらしく、余裕の笑みを作ってみる。