春の欠片が雪に降る


(いやいやいや、ヤキモチ妬いてるみたいにしか見えないじゃん、もうほんと、やめてほしい)

 『木下くん私のこと好きなわけ?』

 そんなことを思わず口にしてしまいそうになる。

 違ったとしても、違わなかったとしてもそれを言葉にしてしまったとして、その先にほのりにとって望む未来があるとは思えないのに。

「あ、そんなことより木下くんは精算大丈夫?」

「はい、ちゃんと終わらせてます。ってか、吉川さんがやってくれましたやん」

 振り返り答えた木下は不思議そうに言った。

 自分がまとめて本社に提出したのだから知っている。けれど、他に話すことが思い浮かばなかったのだ。

「あはは……、そうだったよねー」

 もう少し若かったり、他人を羨むばかりになった、こんな自分ではなければ。
 踏み出せば、何かが始まりそうな予感に胸を躍らせることができたのだろうか?
 
 
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